Traumerei
日曜、たまたま予定が空いてしまった正午前。 お暇デスか? そう誘った外出準備中の彼の言葉に頷いたのは、ただの気紛れだった。 一緒来る? 袖を通したジャケットの前を整えながら続けた彼がにっこりと微笑む。退屈しのぎには...
日曜、たまたま予定が空いてしまった正午前。 お暇デスか? そう誘った外出準備中の彼の言葉に頷いたのは、ただの気紛れだった。 一緒来る? 袖を通したジャケットの前を整えながら続けた彼がにっこりと微笑む。退屈しのぎには...
「ユ~リ~」 間延びした、猫なで声。聞くタイミングを誤れば全身に鳥肌が立ちそうな声を背中で受け止め、ユーリは握ったペンを持ち直した。 はぁ、と吐きだしたと息は今日これで何度目だろうか。 ここはユーリの部屋で、部屋の...
かりかりと神経質にも思われる音を響かせながら、分厚い木の机に重ねた譜面へ音符を写し取っていく。落書きや訂正の二重線、それに書き損じ等々が雑多に混ぜられて正しいラインを探るのでさえ難しい、下書き以前の問題である譜面から、...
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ふとした瞬間に気付くことは、未だに多い。 それはクセのようなものだったり、習慣になってしまっている事だったり。服の趣味だったり読む本の傾向だったり、好んで耳に入れたがる音楽のジャンルだったりと様々。 もう数えるのも...
すべてを代償にしても 叶えたい願いはありますか 永遠に色褪せさせないで 想い続ける勇気がありますか 奇跡を 望みますか? あの夜からどれだけの月日が流れたのだろう。 人気絶頂期にあったバンドグループDeuilは、あの...
落ちる おちる おちていく どさっ。 「……って」 あれ? と。 背中から肩に掛けて、と、後頭部がずきずきと痛い。左足が膝の裏からベッドの端に引っ掛かっている、左手の手首から先だけがかろうじてベッド上に残っていた。縁...
雨が降っている。どうやら風もそれなりに出ているようで、雨の滴が窓をしきりと叩く音で目が覚めた。 ぼうっとしたままの意識を数回の瞬きで覚醒させ、それでも依然として重いままの身体をゆっくりと起こした。引き寄せた膝に巻き込...
襟裏に通した細いネクタイを前で揃え、綺麗な形になるように鏡と睨めっこをしながら結ぶ。結び目を固く作ってから一度手を離してバランスを確かめ、若干右下がりだったのを修正してから椅子の背もたれに掛けていた上着を手に取る。 テ...
散歩に行こうかと、誘ったのは彼。 久しぶりの完全休日、朝から夜まで予定は一切無し。何処へ行こうと、何をしようと誰も咎める事をしない。咎められる必要の無い日の午前、少し遅い時間帯。 漸く起き出してきた城の主にそう声を...