Fool?
まさに春爛漫と言わんばかりの穏やかな空模様の午後。ユーリはいつものようにテラスのパラソルの下でのんびりと、午後のティータイムを楽しんでいた。 陽射しは柔らかく温み、空から地上を見下ろしている陽光も限りなく優しい。パラ...
まさに春爛漫と言わんばかりの穏やかな空模様の午後。ユーリはいつものようにテラスのパラソルの下でのんびりと、午後のティータイムを楽しんでいた。 陽射しは柔らかく温み、空から地上を見下ろしている陽光も限りなく優しい。パラ...
はらはらと、舞い散る薄桃色をした花びらに手を差し出す。 けれど花びらは、気紛れに吹き荒んだ風に煽られて手の平の手前ですぅっ、と方向を変えてしまった。そのまま足許へ、揺らめきながら落ちていく。 「あ……」 ワンテンポ...
朝から空気は不穏な様相を呈していて、落ち着かない。 なにが気にくわないのか分からない、ただ城主の彼がやたらと不機嫌そうな顔をしてむっつりと、苛々した様子で居るものだから。 城中がそんな空気に占拠されてしまって、彼を...
ぼんやりと、眺めている月は大きくてそして丸い。 ふくよかな頬を持った女性のような顔つきをして、のんびりと地上を照らしながら見下ろしている月はとても綺麗。だけれど月は案外表面もでこぼこしていて歪だし、なにより太陽の光を...
翌朝、目が覚めたときにはもう彼のベッドは空っぽだった。 綺麗にベッドメイクが為されており、けれどだからこそそこで昨夜まで横になっていたのかと思うと、信じられない気分にさせられた。 柔らかいクッションに手を置いてみる...
この投稿はパスワードで保護されているため抜粋文はありません。
ピアノの音色が響いていた。 それは本当に微かで、ホールから音の発生源を探ろうとしたユーリは高い天井のシャンデリアを中心に視界をぐるりと一回転させた。けれど分からず、首を捻ってしまう。 城の中にある一室に控えているグ...
少しばかりの沈黙の後、彼は戸棚から掌にかろうじて収まるサイズの小箱を取りだしてきた。 今まで散々口げんかをしていた中での、ある種突飛に感じさせてくれる彼の行動に眉目が歪む。そんな彼の表情を眺め見て、彼は小さく苦笑した...
ベッドの上に、横になって天井をぼんやりと見上げる。 不意に思いついて、右腕を持ち上げて手の平を広げてみた。真っ直ぐに伸ばして天井へと突きつけ、包帯に五指すべてがくるまれた自分自身の指をぼんやりと見つめる。 近い場所...
ボゥルを片手に、もう片手にゴムべらを構え、悪戦苦闘している様子は一見すると微笑ましい限りなのだろうが。 なにせその両方を持ってガチャガチャと不協和音を奏でている本人は、鬼のような形相をしているものだから笑うに笑えず。...