Humidity
梅雨の曇り空が広がっている。ガラス一枚越しに見える景色はどんよりと重く灰色で、それだけで陰鬱な気分が増す。 幸いにしてまだ雨は降り出していないものの、それも時間の問題だろうと雲の厚みから想像がつく。数日続いていた雨の...
梅雨の曇り空が広がっている。ガラス一枚越しに見える景色はどんよりと重く灰色で、それだけで陰鬱な気分が増す。 幸いにしてまだ雨は降り出していないものの、それも時間の問題だろうと雲の厚みから想像がつく。数日続いていた雨の...
軒を打つ雨音だけが断続的に窓を超え、響いてくる。 閉めきったはずの室内は、しかしその僅かな隙間からさえ外気が流れ込み、微かにだけれど感じられる、水の気配。 恐らく一歩外に出たならば、バケツをひっくり返したような豪雨...
年が変わる前に買ったカレンダーの、その日にユーリは忘れないようにといち早く丸印を入れていた。カレンダーを捲るのはアッシュの仕事だったが、月頭のその印がなされた日は、その月が来るまで誰にも気付かれない。 いや、もしかし...
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ちらりと、膝の上に広げた本から持ち上げた視線で何気なく窓を見た。 光の射し込まないカーテンが、受け止める風も無く垂れ下がっている。白のレース地も外の薄暗さを受け、やや鈍い色に映った。 外は雨。朝から、否、昨日から降...
時折小春日和の陽射しが地表を明るく照らすとは言え、未だ季節は冬の盛り。時間も過ぎれば木枯らしが吹き付ける、厳しい寒さが戻ってくるに違いない。 だが街を行き交う人たちの群れはそれぞれに暖かなコートに身をくるみ、どこか忙...
休暇を利用して訪れた山間のロッジは、緑豊かな森に囲まれた場所にひっそりと佇んでいた。 借り受けた鍵を使い、訪問者も疎らなはずの中に足を踏み入れる。だが近くに管理人が住み定期的に手入れをしているとかで、思っていた以上に...
ちらりと覗いた窓の外は悔しくなるくらいの快晴。これで気温がもう少々高ければ、庭に出て日向ぼっこにでも勤しんだだろうに、と歯ぎしりをしたくなるくらいの。 一面の青空と、ぷかぷかと浮かぶ真っ白い雲。洗濯したての様相を呈す...
雪が降る。深々と、音もなく静かに。白い雪は地表の汚れすべてを覆い尽くして隠そうとするかのように、人々のエゴや欲望を浄化しようと必死になっているかのように、雪は降り続けている。 朝方一度止んだ雪は、昼前にまた本降りにな...
天気予報が、明日はこの冬一番の冷え込みを記録するだろう云々と告げていた。 カーテンを閉め、外界と繋ぐ門のひとつを遮断すれば残るのは室内に灯るランプの、控えめな仄暗い明かりだけとなる。薄暗い中で沈黙する空気を唯一揺らし...