insanity
春が来る。 淡い薄紅色に染まった空から、はらはらと降り注がれる小さな花びら一枚一枚が、まるで天から舞い落ちる季節外れの雪のようで見つめるうちに自分がいる場所が果たして現実か、夢の中の幻想なのかが区別もつかなくなりそう...
春が来る。 淡い薄紅色に染まった空から、はらはらと降り注がれる小さな花びら一枚一枚が、まるで天から舞い落ちる季節外れの雪のようで見つめるうちに自分がいる場所が果たして現実か、夢の中の幻想なのかが区別もつかなくなりそう...
久方ぶりに繰り出した街は、今日が週末という事も合ってかかなり混み合っていた。 空を見上げれば澄み渡る冬の空、しかし浮かれ気分の街の姿は寒々とした雰囲気と熱波のような空気とが入り交じる不可思議な空間と化していた。 道...
夜の空は、昼間の面影を残し紫紺色に染まってもなお、天の色が見て分かる程に澄んでいた。空気は透明で儚く、虚ろであり純粋で、冷たく厳しいがそれでいて、時にとても優しい。 冬の大気に解けてしまいそうで、吐く息の白さに目を見...
空は澄み渡り、千切れた白い雲が西に僅かに見える以外はどこまでも晴天が広がっている。天頂は高く、吹き荒れる風も無く静かでとても穏やかな日差しが地上に降り注がれていた。 おそらくは暖房の効いた暖かい室内に在って、曇りひと...
ひんやりとした空気が頬を撫でる。風こそ無かったが澄み渡った空の色に吸い込まれそうで、首が痛むのも構わず空ばかり見上げているうちに鼻の奥がむずむずとしてきた。 「くしゅっ!」 我慢できずに露出する片目を閉じて身体を前屈...
欠伸を噛み殺し、眠い目を擦ったユーリは気を抜くと左右に揺らいでしまいそうになる両足を叱咤して廊下を歩いていた。細く長い通路は永遠に続く闇の中に溶けて消えてしまいそうで、終わりがないように思えてしまうのが不思議だ。明け方...
それは、何もない一日の、なんでもない出来事。 予定されていた写真撮影が、先方の都合により急遽延期となったという連絡が入ったのは、当日の僅か二日前。 忙しいスケジュールに無理を言って組まれていた、丸一日使用しての撮影...
目が覚めると、真っ白い天井が目の前に広がっていた。 ――…………アレ 腰の横で背中を預けている堅いものに手を置き、上半身を起こして左右を順番に、交互に見回す。 真っ白だ。四方が壁に覆われた、正確に計る術は無いけれ...
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昨日、袋に入った四角形の大きな荷物を半ば引きずるようにして帰ってきてから、一度も部屋を出てこないのだと最初に聞いたのは、朝の起き抜け、朝食を摂ろうと席に着いたその時だった。 最初は誰を指して言っているのか分からず、フ...