don’t leave
Deuilは三人組のバンドであるが、活動はバンドだけ、ではない。 歌は三人の名前で発表することもあれば、ソロで各自出したりもする。或いは自分では歌わず、楽曲のみを誰かに提供したり、アッシュに関しては料理本を出したりと...
Deuilは三人組のバンドであるが、活動はバンドだけ、ではない。 歌は三人の名前で発表することもあれば、ソロで各自出したりもする。或いは自分では歌わず、楽曲のみを誰かに提供したり、アッシュに関しては料理本を出したりと...
庭で、アッシュ君が干したのであろう洗濯物と、真っ白なシーツが風に煽られて揺れていたから。 足元に古びた、けれど弦は張り替えられてまだ新しいクラシックギター。確かスマイルがこの城に来た当初から持ち歩き、愛用しているもの...
その日は何故か早く休む気になれなかった。 妙に身体が高揚している、特に日中これといった出来事もなかったはずなのに。 普通に仕事をし、食事をし、仲間と語らい、湯船に身を浸して気持ちを休め、まるで健康な人間の如きタイム...
もういいかい まぁだだよ 長い間眠っていた。 ただ虚無に流れていく時間が空しかったから。 永劫の時を刻む身体には歳を重ね...
風が吹いていた。 「……?」 自室へ戻ろうと、暖かな湯気を放つマグカップを手に歩いていたユーリはふと、前髪を揺らす空気の動きに気づいて目を細めた。 思わず足を止めて上目遣いに細い銀の髪が揺れる様を眺めてしまう。どこ...
締め切り前の気晴らしという口実で出かけた市街地。 雑多に色々なものが交じり合い、原型の分からない色で溢れかえっている空間を遠巻きに眺めてみる。 本屋には行ったし、レコードショップにも行った。目当てのものは本屋だと二...
カッチ、コッチ。 カッチ、コッチ。 規則正しく、駆け足になったりも、のろのろ運転になったりもしない。 焦ることなく、迷うこともない。 カッチ、コッチ、カッチ、コッチ。 毎日、同じ時間をかけて同じ回数回り続ける...
うららかな日差しが心地よい。長かった冬が漸く終わりを迎え、緩んだ水が大地を潤す季節がやってきた。 暑すぎず、寒すぎず。時折吹く風はまだ若干冷たく感じられるが、それもさほど苦ではない。胸いっぱいに息を吸えば、どこかで芽...
目聡くそれを見つけられたのは、ほぼ奇跡に近い。 人外の、獣としての嗅覚がその結果を導いたとしたら、それはとても皮肉なのだけれど。 「スマイル」 城のフロントロビーにあたる場所ですれ違った彼に声をかけ、呼び止める...
のんきに鼻歌を歌いながら、リビングの扉を開けたのは丁度陽も翳り始めた夕方の五時ごろだったかと思う。今日の夕食の献立のチェックと、誰も使っていないようであればテレビを占領してやろうという程度の魂胆で足を踏み込んだ場所は、...