Shell
唐突、に。 「海に行きたい」 なんて君が言うから。 「は?」 聞き間違いかと思って間抜けな顔をして振り返ってしまった。 けれど意外に近くにあった君の顔は至極真剣で、からかうような彩は紅玉の瞳にまったくなかった。 ...
唐突、に。 「海に行きたい」 なんて君が言うから。 「は?」 聞き間違いかと思って間抜けな顔をして振り返ってしまった。 けれど意外に近くにあった君の顔は至極真剣で、からかうような彩は紅玉の瞳にまったくなかった。 ...
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朝の雑踏は、大勢の人が一箇所に集まっているくせに声がなくて辺に騒々しいのに静かだった。 込み合った車内から出ると、通り過ぎていく風は涼しい。下り線の到着を告げるアナウンスが聞こえ、そちらに意識が向いているうちに階段へ...
色のない空間が、何処までも、どこまでも。 最果ては見えず、地平線のその向こうがどうなっているのかは皆目見当が付かない。もしかしたら、その先は断崖絶壁でその昔、人々がまだ純粋に神話を信じていた頃の想像された世界の端があ...
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太陽が昇って、沈んで、毎日は変わらないサイクルで誰の上にも平等に訪れる。 今日が永遠に続けばいい、明日なんか来なければいい。そう祈っても願いは叶わない。そして、明日になればこの目は見えるようになっていると願っても。 ...
ユーリが、失明した。 人通りの多い駅の階段で後ろから押されて、急いでいた所為もあったのだろうけれどバランスを崩してそのまま一番下の踊り場まで落下。大体十段ほどは落ちたのではないだろうかと、見ていた人が言っていた。 ...
最近どうも、仲間達が冷たい気がする。 リビングのソファでくつろぎながら、ユーリはそんなことを考えていた。 忙しそうに室内を掃除して回っているアッシュも、何故かユーリの方を見ようとしない。いつもならユーリの視線に気付...
緩い陽光に照らし出されたテラスは、庇の影に紛れて少しだけ気温が低くなっている。 まだ本格的な夏には遠く、幾分過ごしやすい天候が続いているが気温が低いのは日陰である以外にも、夜中中降り続いていた雨が止んだ事にも理由があ...
独りで居るよりは、誰かと触れあってその温もりに安心していたい。 けれどその環境に慣れてしまったとき、失った時の喪失感はとても大きくて自分は酷く脆く砕けてしまいそうになる。 だから、求めないことにした。 温もりを手...