狭間の生命

 朧々とした月の映える空の下で、僕らは、いつもと同じように、けれど今までとは確実にまるで違ってしまった空気を感じながら、屋根の上に座っていた。  お互い、ことばのひとつも発さぬまま、こうやってじっとしているだけの時間が果...

夕凪の声

 ぱしん、という乾いた音は思った以上に大きく響いた。  いや、きっとその場に居る誰しもが――殴った本人と殴られた当人でさえ――そんな結末になるとは一瞬前でさえ予想していなかったに違いない。  それくらいに、唐突だった。 ...