小休止5

 コトン、と彼は片手に抱いていたマグカップをテーブルに置いた。  少し温くなってしまっていたコーヒーの苦みが彼の口の中いっぱいに広がり、いつも以上に目立つ匂いのきつさも合わさって彼の眉目には深い皺が刻まれてしまっている。...

小休止2

 夕焼け小焼けの赤とんぼ  とまっているよ 竿の先  一面のススキヶ原にお前を見つけた。  草むらの中に埋もれるようにして、その中に一本だけ忘れ去られたように立っている小さな棒に向きあっている。その顔はとても真剣そうで、...

導きの手

 おちた。  ひろおうと、した。  つかまった。  つかまって、  それから?  それから……  身体中が、痛い。その上に、重い。  ずっしりと胸の辺りから腹にかけてのし掛かっている、まるで漬け物石のような重みに思い切り...

十六夜の月

 暗闇が押し迫り、自身の足許を確かめるのもおぼつかなくなり始めていた頃、ようやく仲間の間から誰とも無しに、今日はここまで、という声が上がり始めた。  最初に賛同の声を上げたのはお約束ながらフォルテで、だが相棒のケイナも疲...

光の在処

タ ス ケ テ        声が聞こえ、ハッとなりマグナは顔を上げた。  今までぼうっとしていたらしい、自分が立っている場所が何処であるかを認識するのに数秒掛かった。だが、その数秒が終わっても彼はそこが何処なのかを理解...

甘い休日

「これあげる!」  そう言って両手いっぱいに抱えていたものをマグナに押しつけて、褐色の肌をした少女……と呼ぶには少々年齢がアレであるが、ずっと人里離れた場所でひとり暮らしていた分幼さが充分に残っているルウは勢いよく駆け出...