秘密の朝

 コンコン、と。  二度の遠慮がちなノックのあと、もう一度立て続けに三度扉を拳で軽く叩いて反応を待つ。  だが、予測通り中から応対の声は聞こえてこない。 「…………」  渋い顔を更に剣呑なものに変え、彼はフレームの細い眼...

花火の夜

 色々なことがあった。  色々なことが在りすぎて、頭の中が整理し切れていない面も大きい。  けれど分かることは、これだけは言えるって胸を張れる事はある。  俺は自分が決めた道を今ようやく歩き出せたこと、守りたいものを見つ...

小休止4

 どっと。  エドスとガゼルが一斉に笑い出して、場は一斉に盛り上がりを見せていた。  笑われてしまったアルバが顔を真っ赤にしてガゼルに反論する。けれど年齢差は則ち経験値の差、である。アルバが口でガゼルに勝てるはずがない。...

小休止6

 喧嘩をしてしまった。  自分らしくなかったと、後から十分反省するに足りる程にその時は激昂して怒鳴りつけてしまった。喧嘩というよりもむしろ、彼の行動とその行動を取る原点に当たる考え方が気にくわなくて、珍しく声を荒立ててし...

小休止3

 キョロキョロと、その背中は落ち着きなく周囲を伺っていた。  廊下の角で、その向こう側の様子をそうと分からないように見ているようだ。しかし彼の後方から見つめている双眸の存在にはまったく気づいている気配がない。  意識が前...