邂逅

 小春日和の午後の町を、薄手のコートを羽織った少年がひとりで歩いていた。  年の頃は13,4歳だろうか。見た目はもう少し若いかもしれないが、うつむき加減で大通りを北に進む少年の眼は、とても十余年しか生きていない子供が宿せ...

英雄の墓標

 空はどこまでも青く、広く、穏やかだった。  まるでこの戦乱狂気の時代を嘲笑うかのように、ひそやかにそして艶やかに、空はいつもそこにある。  地上に生きる卑小な人間の愚かな騒乱になどまるで興味を示さないで、風を運び雨を降...

白の版図

子供たちへ  その道は非常に険しく、茨の道であろう  辛く、苦しく、また悲しみに満ちた永い道となるだろう  だが決して諦めてはならない  己自身で決めた道であるならば  最後まで貫き通す事を忘れてはならない  はじめに、...

宕冥

 リドリーが死んだ。  その現実の重さがセレンの肩にずっしりとのしかかっている事は誰の目にも明かで、暗く沈んだ空気を感じラスティスは今日何度目か知れないため息をついた。  彼が逃げ出した理由がよく分かるから、あえて止めよ...

陽炎

 トゥーリバーからキバ将軍の軍を退けた後、彼らはかつてのノースウィンドゥ、今はレイクウィンドゥと名を変えた城に凱旋した。待ちかまえる仲間達からはよくやったという言葉が雨のように降り注がれ、苦しい戦いに勝利したことを誰もが...

虹の橋を渡れ

 昔、まだ世の中が今よりも平和だった頃  よく母が語ってくれたおとぎ話  どうしても最後が思い出せない  あれはなんという話だっただろう……  ハイランド王国、ルカ・ブライトとの戦いもいよいよ佳境に突入しようとしていた。...