コトノハノマホウ/犬飼冥の場合

 暇、だったから。  理由はそんなところ。退屈しのぎになる、けれど道具もなにも必要のないものをしようと考えていたら、結局そんなものしか思い浮かばなくて。  この年になって、男ふたり向き合って真面目な顔をつき合わせながら、...

ソノセナカ、キミノホコリ

 鹿目先輩誕生日記念小説、ってなわけですがあんまり鹿猿とか猿鹿とか考えずに真面目な小説にしようと思っていたはずが、なーんか違う。スランプ中でもないんですが、改めて書こうとするとダメになる期間の所為でつまらない作品になってしまいました。ちぇっ。  鹿猿鹿(リバ?)な小説は他に2ネタほどあるので、そのうちま...

真昼の月

 月が出ていた。  真昼の月は儚く、朧気で、まるで夢の中でまどろむ淡い恋心にも似ているような気がした。だがすぐに、陰鬱な気持ちが押し寄せてきて首を横に、小さく振ると僕は視線を足元に咲く白い花に落とした。  今日、ひとりの...

Folly

「あ」  と、だけ。  正面玄関の分厚い扉を開けようとしていたスマイルは、後ろから伸びてきて一緒になって扉を押す力を加えてきた存在に振り返り呟いた。  重厚で重い扉を開けるにはちょっとしたコツがいる。そして何故か、理由は...

夏草の道

 寥々とした荒野のただ中で、ひとり道を失い男が立ちつくしている。  空は暗く重い雲が一面を覆い尽くし、旅人に道を示す星の明かりすら、今では一条の光もない。  目印となる巨木や山並みもなく、どこまでも平坦なばかりの地平線が...