「いっただっきまーす」
獄寺と山本、そして綱吉が両手を顔の前で合わせて声をそろえる。挟み持った箸を待ちきれないと握り締め、ランボもまたそわそわと落ち着きが無い。
「はい、どうぞ」
三方に供えていた団子を崩し、小皿に取り分けるのはバジルの仕事。綱吉自ら団子を作ろうとした理由は、イタリア人のシェフに説明をしても、月見の風習が無い彼らは正確に理解してくれなかったから、らしい。
わざわざ本土の日本人街にまでヘリを飛ばして獄寺が材料を調達したのは行き過ぎだろうと思われたが、シチリアの街で餡子を入手するのは、確かに至難の業だ。
「十代目、美味しいですね!」
懐かしいな、と山本が感慨深く呟く横で、綱吉が作ったものだと勘違いしている獄寺が、口いっぱいに団子を頬張りながら叫ぶ。飛び散る餡子を手で避け、綱吉は苦笑しつつリボーンを盗み見た。
彼は静かな顔をして、行儀良く団子を箸で抓んでいる。
「そう……それは良かった。ね、リボーン」
「ああ」
同意を求めて問いかけた綱吉に、彼は愛想無く相槌だけを返す。どういう事だろう、と目を丸くした獄寺の顔を見る事無く、リボーンはぼそり、呟いた。
「ツナの耳朶の柔らかさに仕上げたからな」
「なっっ!」
獄寺が噎せて団子を噴出した。汚い。
山本が興味深そうに団子を持ち上げ、一頻り眺めた後歯を立てて噛み付いた。止めて欲しい。
ランボが箸に挟んでいた団子を落とした。だからどうしてそこで固まる。
バジルが楽しそうに団子を指で小突いた。だから止めて欲しい。
リボーンがにやりと、楽しそうに口端を歪めて笑った。
「違わないだろう?」
綱吉は真っ赤になって怒鳴った。
「違わないけど、ちっがーーーうっ!!」
夜空にぽっかりと浮かぶ満月が、そんな光景を微笑ましそうに眺めていた。