非具象的恋愛実践論・兎丸編

 朝、眠い目を擦りながらの登校の最中オレは背後から予告もなく、タックルを喰らった。
「ぬぉお!!?」
 眠気もすっ飛ぶぞ、というな感じでオレは勢いを殺しきれず背中に貼り付いたものをそのままにして思い切り顔面をアスファルトに強かと打ちつけた。鼻が潰れた気がする。
 野球部の朝練の時間は決まっているから必然的に、周りにはぽつぽつと見慣れた顔の高校生が。彼らは毎朝のように繰り返される、オレと、それからオレにタックルをかましてきた相手とのやりとりに肩を竦めて笑っていた。
 笑う前に助けろよ、お前ら。あとで体育館裏に呼び出すぞ、と本気で怒鳴りたくなったオレだったが、のし掛かってくる奴がちっとも動かない為になかなか起きあがれずにいた。いつもならオレが倒れる前に横に逃げる癖に、今日に限ってはしっかりと上からオレを潰しに掛かっている。
 一体なんだって言うんだ、オレになんの恨みがあって毎朝こんな事してくるんだと前に尋ねたら、愛情の裏返しだよ、なんて笑いながら言われて、それ以来オレは深く突っ込む事をやめた。どうせこいつは御子様なんだから、と諦めモードに入っていると耳元で大声を喚き散らされる。
 トリップしかけていたオレはその声に現実へ引き戻され、漸く軽くなった身体を起こし向こうの方へ放り投げてしまっていた鞄を拾いに行く。埃まみれになった制服を払ってから歩き出そうとすると、無視されたと思ったらしいあいつはぱたぱたと被っている帽子の耳を揺らしながら慌てて追い掛けてきた。
「待ってよ~、兄ちゃんってば」
「うっせぇ、スバガキに構ってやるほどオレ様はボランティア精神豊かじゃねーんだ」
「新しいゲーム、もう貸してあげない」
「鞄お持ち致しましょうかお坊ちゃま」
 即座に揉み手の低姿勢体勢に入ったオレを呆れた顔で見上げて、兎丸はもう、と頬を膨らませた。両手を腰に当て、それなりに大きいオレと自分との身長差を少しでも埋めようと背伸びをし、オレの額を小突いた。
 調子良いんだから、と拗ねた口調で言いはするがこういう時の兎丸は大抵、本気で怒っていない。
「ねぇ、兄ちゃん。今日は何の日か知ってる?」
 学年も一緒だと言うのにオレのことを「兄ちゃん」と呼ぶ兎丸。だが身長差やどこまでも子供っぽい性格をしている所為か、周囲にもオレ自身にも、そう呼ばれることに違和感を持ったことがない。
 まぁ、野球の練習中のコイツはちっと黒い気がする事は否定しないけど。
 でもそれ以外の時はもの凄く素直で、からかった後の反応なんかが楽しかったりするからオレはよく、兎丸で遊んでた。こいつも悪い気はしていないみたいで、オレにお著繰られてはその度に拗ねて、本当に兔みたいにぴょんぴょん飛び跳ねたりしている。休日なんかにあいつの家にゲームしに行った事もあるくらいだ。
 沢松や子津とはまた違った感じの友達……いや、弟が居たら多分こんな感じなのかもしれない。
「今日って……5月31日?」
「そう」
 頭の中でカレンダーを思い浮かべたオレの言葉に、隣を遅れないようにあるく兎丸が大きく頷いた。
 今日は五月の最終日で、明日からは六月が始まる。単純にそれだけしか思い浮かばなかったオレは、何故かわくわくとした顔で待ちかまえている兎丸を見下ろし、人差し指を立てた。
「明日からは、衣替えで夏服だ」
 今の女子の制服も良いが、夏服のあの汗で透ける白い薄手の生地がまたたまらなくセクシーなのだと、オレは頭の中で凪さんの夏服姿を思い浮かべた。おっと、いけねぇ。涎が出そうになった。
 緩く開いた口から垂れそうになった涎を拭い、妄想を端に追いやったオレだったが、兎丸が期待していた答えとはどうやらかけ離れていたらしい。明らかに不満です、と分かる顔をしてオレを睨んでいた。
 そりゃあ、衣替えは正確に言うと明日だから今日の事には当てはまらないだろうけれど。そう睨む事もないじゃないか、と思っている間にオレ達は学校に到着していた。時計を見ると、朝練開始までもう余裕がない。早く着替えてトンボ掛けをしておかないと、先に来て準備をしている連中に文句を言われかねない。
「おい、スバガキ、急ぐぞ!」
「ああ、待ってよ兄ちゃんってば!」
 まだ答えを貰ってないよ、と後ろから叫ぶ兎丸を置き去りにしてオレは走った。どうせ競走したらオレが負けるんだから、先手を取って駆け出しても部室に到着するのは殆ど同時刻。
 それから大急ぎでユニフォームに着替えて、グローブを持ってグラウンドに走り込む。案の定先に来ていた犬飼や司馬達がトンボを手にグラウンドに散らばっていた。
 オレは息を切らして肩を上下させながら残っているトンボを取りに走る。上級生の姿もちらほらと見える中、予定時刻が来て監督が姿を現すともう無駄口を叩き合う暇もなく練習に突入する。
 始業時間ぎりぎり寸前までグラウンドをかけずり回り、つかれた身体を引きずるように教室へ向かう。一時間目は睡眠時間だな、と欠伸を噛み殺すオレはだから、恨めしげに見つめてくる兎丸の視線にも殆ど気付かなかった。
 あいつはオレ以外の連中にも今日は何の日か聞いて回っているようだった。しかし誰もあいつが期待する答えを告げてくれず、最後は拗ねたまま部室を飛び出して行ってしまった。
 あれを見ると、もうちょっと構ってやれば良かったかなとも思うわけだが、オレにだってオレの都合があって他の奴に気を配ってやれるほど余裕綽々でもないわけで。
 悪いと思いつつ、オレは昼まで兎丸の事をすっかり忘れていた。
 思い出したのは、昼飯を沢松とつつき合っていた時。偶然頭の中を早朝の出来事が過ぎったものだから。
 試しに尋ねてみただけだったんだが。
「なー、沢松」
「お前ピーマンちゃんと食え……なんだ?」
 手製ハンバーグにさりげなく混ぜ込まれていたピーマンの細切れを器用に退かしていくオレの手を遮り、沢松が視線を上げてオレを見る。つい睨み返してしまうが、奴の目が先を促すように動くものだからオレは渋々、塊になっていたピーマンを口に運びつつ呟いた。
 今日は何の日か、と。
「冬服最後の日」
 ほら、やっぱり誰だって最初はそう思うってば。オレだけじゃなかった事に安堵しながら、苦虫を噛み潰す思いでピーマンを奥歯ですりつぶす。その様子を沢松が笑ってから、片付け終わった弁当箱を仕舞い始めた。
 あの黒い学生服を着るにはいい加減暑苦しい季節である、オレ達は当然ながらあんなものを着ているはずがなく白の開襟シャツを着ているわけだが、女子は合い服がないからなかなか大変そうだ。
 またしても凪さんと、何故か女マネの残りふたりの夏服姿まで頭の中に浮かび上がってきてオレは慌てて、凪さん以外を消し去ろうと両手を振り回した。その挙動不審を呆れ顔で見守り、沢松が頬杖を付く。
「あとは、なんだっけ。世界禁煙デー」
「お前、なんでそんなもん知ってるんだよ」
「朝のテレビでやってた」
 どうせオレは朝練でその時間にテレビを見てませんよ、と心の中で舌を出して拗ねたオレの頭を沢松が苦笑しながら撫でる。子供扱いされた気分でむっとするが、はね除けようと言う気持ちにはならずそのままそっぽを向くだけに留めた。
 付け足すように奴は言う。
「あとは、蕎麦の日とか」
 他にも今日が誕生日の有名人を数人挙げられたものの、それが兎丸の言っていたものに合致するとはとても考えられない。なにせ奴の存在からこれらの記念日は縁遠く感じられたから。
 そもそも奴が世界禁煙デーが今日だぞ、なんて言うガラか?
 絶対に違うと、オレは妙な自身を持って頷いた。だが同時に、疑問が残る。
 じゃあ一体、奴が当てて欲しがっている事って結局、なんなんだ? オレに関係することか?
「案外すっげー簡単かもよ」
「沢松、お前分かったのか?」
 教えろよ、と向かいの席で涼しい顔をしている親友兼幼なじみの顔を覗き込む。だが少々底意地が悪いところのあるオレの幼なじみは、舌打ちしながら顔の前で立てた人差し指を左右に振った。
 仕草が古くさいぞ。
「まあ、多分あれだ」
「どれだ」
「俺で言うところの、1月30日って奴だな」
 憶測だけど、という念押しをした上で沢松が片目を閉じた。
「はぁ?」
 一瞬分からなくて俺は素っ頓狂な声を出してしまった。クラスに居た他の連中が何事か、という顔を俺に向けてきたのを笑って誤魔化し、声を潜めて沢松に再度問いかける。
 今度も、アイツは笑うだけで答えなかった。いや、むしろ忘れてるんじゃねーと笑顔で怒られた。
「だから、何の日……あ」
「思い出したか、この親友不幸者」
「勝手な造語作ってんじゃねーよ」
 ジト目で睨みながら俺を突っついてくる沢松を鬱陶しげに追い払い、唇を尖らせながらオレは溜息を零す。ネタが分かってしまえば、なんてことのない問いかけだ。
「多分、だけどな。確かあのちっこいのの誕生日、近かったはずだし」
「なんでお前がそんな事詳しいんだよ」
「新聞部の特権」
 にやっと笑ってピースマークを作った沢松の頭を軽く殴り、オレは空になった弁当箱を片付け始める。まだ舌の上でピーマンの味が残っている感じがして、あまり良い気分ではなかったがひとまず、謎は解けた。
 次の問題は、どうするか、だ。
「購買のパンでも買い与えてみるか」
 財布の残高を計算しながら頭を掻く。外へ買いに行こうにも学校から出るわけにはいかないし、放課後はまた練習だ。それまでに用意できるものなんてたかが知れている。今の今まで知らなかったのだから、気の利いたものを用意しておく方が無理ってものだ。
 当日に強請るくらいなら、先に言っておけよと愚痴りながら午後の始業を告げるチャイムの音を聴く。
 そしてぼんやりとしている間に授業は全部終わって、放課後がやって来て。
 必然的に、兎丸とも顔を合わせる事になる。オレはなけなしの金で買った購買の売れ残りパンを鞄に隠し、他の面々よりも若干遅れて部室の扉を開けた。
 途端、甘ったるい匂いがオレの鼻先を掠めていってうっ、と息を詰める。
「あ、兄ちゃん!」
 部室の中央、匂いの発生源に居た兎丸がいち早く扉前で凍り付いているオレを発見して手を振った。振られている手の中には食べかけのチョコレートが握られていて、よくよく見れば奴の周りには大量の菓子が山を成していた。
 更に、山を取り囲むようにして苦笑を浮かべている野球部の面々。
 どうやら兎丸は、お誕生日お強請り攻撃をオレ以外にも仕掛けて皆が隠し持っていた菓子類をほぼ強引に、奪い去ったらしい。なんというか、逞しいというべきか……呆れる。
「おい、スバガキ」
「なに?」
 ベンチから立ち上がった兎丸がオレの方へちょこちょこと歩いてくる。途端にチョコレートの匂いもきつくなってオレは思わず後退してしまった。甘いものは嫌いではないが、こうも匂いがぷんぷんして近付いて来られると、腰が退けて仕方がない。
 だけれど完全に逃げ切る前に兎丸に飛びつかれ、オレは今朝のように倒れ込みはしなかったもののかなり危うい体勢で小さな身体を受け止める。首に回された両腕をしっかりと結んだ兎丸の身体は、ぶらりと爪先立ちでオレにぶら下がる事になった。
 既にユニフォームに着替え終わっている兎丸からは、チョコレートに混じって土の匂いもした。
「スバガキ、そのよ、なんてーか……」
「いいよ、プレゼントなんか用意できてないんでしょ?」
 言いにくそうに口澱んだオレの表情を読みとって、先手を打つように兎丸は笑った。相変わらずオレにぶら下がって顔を近づけたままだったものだから、奴が吐き出す息がダイレクトにオレの顔にぶつかってくる。
 鼻先を擽られている感じがして、なんだか落ち着かない。
「いや、一応……大したもんじゃないけど。誕生日オメデトウ」
「アリガト~」
 先に定例の祝福の言葉を口に出して言うと、微妙な照れが混じってオレは自分の顔が赤くなっていくのを自覚した。間近で聞いた兎丸が嬉しそうに目を細めて笑うものだから、一緒になってつい、オレも表情を緩める。
「あのね、兄ちゃん。プレゼント代わりにお願いしても良いかな?」
 兎丸はどうやら、オレが何も用意できていないものと勘違いしているらしかった。子供の仕草で首を傾げて問いかけてくる奴に、オレは仕方がないなと笑って頷く。簡単な頼み事だったら聞いてやっても良いだろう。この売り残れパンは部活が終わってからこっそり手渡して吃驚させてやるのも悪くない。
 オレがそんな事をあれこれ考えているのに気付かないまま、兎丸はぶら下がった姿勢のまま呟いた。
「偶には、ちゃんとぼくの事名前で呼んでみてよ」
 最初に会った時、試合中にオレが名付けた「スバガキ」っていうあだ名じゃなくて、奴の本名で呼べ、と。つまりはそういう事らしく、随分と可愛らしいお強請りだなぁと軽く笑ってオレはそんな事で良いのか、と逆に問い返してしまいそうになった。
 だが。
 はたと、気付く。
 そういえば兎丸の下の名前って、なんだっただろう、と。
「兄ちゃん?」
 固まってしまったオレの顔を真下から見つめ、兎丸は目を細める。その瞳がどこか剣呑な、薄ら笑いを浮かべているように見えたのは多分、気のせいなんかじゃない。
 背中をじっとりとした汗が流れていく。
「と、兎丸君……」
「下で、呼んで?」
 底意地が悪い笑みを浮かべたまま兎丸はオレに顔を寄せてきた。さっきよりも熱っぽい息が顔に降りかかってくる。
 部室内で一見和やかそうなオレと兎丸の戯れが少々様子を違えてきている事に、一部の人間が気付いたようだった。俄に向こう側が騒がしくなる。
 兎丸が舌打ちした。
「兄ちゃん、ひょっとしてぼくの名前、覚えてない?」
 否定したかったところだが、実際に覚えていないわけだから呼んでみて、と言われても当然呼べるわけがない。冷や汗が倍の量だらだらと流れていくのを感じつつ、オレはなんとか逃走を試みた。
 しかしがっちりと、その小さな身体のどこにそんな力があるのかと思うくらいにしっかり、オレの下半身を兎丸の両足が囲い込んでいて逃げようにも動かせなかった。
 泣きたくなる。今オレは、無性に目の前の悪ガキが恐ろしい。
「覚えてない?」
 涙目でふるふると首を振ったオレだが、兎丸の目は既に据わってしまっている。
 誰かが、離れろ、とかなんだとか叫ぶ声が聞こえたがそれもオレの耳には、果てしなく遠い島からの絶叫にしかならなかった。
「ふーん……そうなんだ。兄ちゃんってば、ぼくの名前知らないって言うんだ」
 ぼくなんか、兄ちゃんの誕生日から身長体重中間試験の点数、風呂に入った時にどこから洗うのか、まで知ってるのにさ。
 と。
 さりげに空恐ろしいことを呟いて兎丸は不意に、にっこりと、笑った。
 虚をつかれた格好で、オレは目を見開いて真正面から兎丸を見つめてしまった。微笑んだその顔があんまりにも無邪気だったものだから、さっきまで感じていた恐怖を一瞬忘れ去ってしまう。
 思えば、それも兎丸の策略だったのだろうけれど。
 ああ、オレのバカ。
「しょうがないから、こっちで許してあげる」
 そう言って、兎丸は。
 オレの首に絡めた腕に力を込めて自分の方へ、オレを引っ張った。身長差の分だけ、オレの身体は前方へ沈み兎丸へと傾ぐ。
 触れた。
 その、唇、に……。
 オレと、兎丸の唇とが、一瞬だったけれど。
 背後で悲鳴が轟く。しかもそれはひとつじゃなかったから、結構笑えない。オレ自身もかなり茫然としてしまっていて、オレを解放した奴が舌なめずりをしながら「ご馳走様」なんて呟かなければ多分、ずっと惚けたままだったように思う。
 って、言うか。
 なんか、こっちの方が名前を呼んでやるって事よりもずっとお高いものだと思うんですけどー……
「みんな、早くしないと遅れるよ~?」
 ひとり元気な兎丸がからからと笑ってグラウンドの方へ走っていく。はっとなったオレは、自分だけがまだ制服姿である事に気付いて慌てて鞄を掴むと自分のロッカーへと急いだ。
 背後で犬飼が咽び泣いてるのがなんか、引っ掛かるけど今はひとまず、それは置いておく事にする。
「ちくしょー。スバガキめ、あとで覚えてろよ」
 自分の手でごしごしと唇を擦りながら悪態をつくオレの肩を、司馬が叩いて注意を促す。着替えを邪魔されてムッとなったオレに司馬が差し出したのは、一体どこに保管してあったのか冷気を漂わせているアイスクリーム。
「……ピノ?」
 六個入り、のあのアイスをいきなり突き出されたわけで、オレは当然ながら困惑する。
 すると司馬は、スッと右手を持ち上げて兎丸の名札がついているロッカーを指さした。
「スバガキ?」
 両者を繋ぐものが見えてこなくて頭を抱えたオレに、司馬は繰り返しアイスと兎丸のロッカーを交互に指さす動作を見せる。それが四度目に至ったところで、ユニフォームを着替え終えたオレはやっと気付いた。
「兎丸……ピノ?」
 コクン、と司馬が頷く。
 途端、オレは脱力。
「そういう事はもっと早く教えてくれよ~」
 がっくりと床の上で項垂れたオレに、司馬が無言のままアイスをオレに押しつけて去っていった。梅雨の湿気と気温を受けてアイスは既に溶け始めており、今これを貰っても部活が終わる前にどろどろになってるよなぁ、と考えると蓋を開けるしかない。
 振り返ればまだ泣きやんでいない犬飼が居て、仕方なく慰めにひとつ分けてやり、オレも一個口へ放り込んだ。舌の上で冷たい温度が広がるのを感じつつ、そういえば、と呟く。
「アレ、オレのファーストだ」
 横で聞いていたはずの犬飼がその瞬間何故か床に撃沈した。反対にグラウンドからは、兎丸の随分とはしゃいだ声が聞こえてくる。オレはもうひとつ、アイスを口に入れた。
 まぁ、でも。
 溶けかけの柔らかいアイスを噛み潰しながら考える。
 アイツなら良いか、と。
 そうオレが思っている事は、この際、秘密にしておこう。

02年5月30日脱稿