千鳥

 魔法の手だと思った。
「動かないでよ」
 じいっと見詰めているうちに、猫背になっていたらしい。鋭い声で叱られて、綱吉は慌てて背筋を伸ばした。
 応接室のソファはクッションがふかふかで、座り心地は抜群だった。背凭れに身を委ねていたらそのうち眠ってしまえそうな恵まれた環境で、彼は行儀良く膝を揃え、左手だけを肩に近い位置まで持ち上げて停止していた。
 直ぐ隣、吐息が混じりそうな近さには雲雀がいた。俯き加減で、長めの前髪に黒い瞳が隠れてしまって見えない。左手を綱吉の手首に添えて、右手を忙しく動かしている。
 真剣さが伝わってきて、思わず息を飲んだ。ピクリと震えた指先を感じ取って、雲雀は怪訝に顔を上げた。
「じっとして」
「わ、分かってますよぅ」
 また叱られた。頬を膨らませて間延びした声で反論して、緊張に強張っている頬を右手で叩く。
 ぺちん、と小さく響いた音に目を眇めて、雲雀はふー、と長く息を吐いた。
 一緒になって、白い糸が綱吉の手元から真っ直ぐ伸びていった。それは雲雀の右手の動きに合わせて前後左右に揺れて、ピンと張り詰めたり、撓んだりもした。
 行方を目で追えば、銀色に光るものが見えた。人差し指と親指に挟まれて、窮屈そうに身じろいでいる。
 針だ。
 並盛中学校に通う学生の大半が、限りなく縁遠いと感じている応接室。入学から卒業するまで、一度も足を踏み入れることのない生徒の方が圧倒的多数を占めるその部屋に、彼らはいた。
 黒い革張りのソファに並んで座って、片方はコチコチに凍りつき、もう片方は何故だかとても楽しそうだ。
「動くと、刺さるかもしれないからね」
「怖いこと言わないでください」
「君がじっとしていれば平気だよ」
 わざと恐怖を煽る事を言って、からかって遊んでいるのだ。呵々と笑いながら言い返した雲雀を上目遣いに睨んで、綱吉は長袖のシャツ越しに感じる彼の体温を頭から追い払った。
 出来るものなら今すぐ此処から逃げ出したい。だが腕を、緩い力とはいえ掴まれている以上、それは容易ではなかった。
 こんなことなら自分で出来ると言えばよかった。数分前の出来事を振り返って、綱吉はこみ上げてきた涙を堪えた。
 息を止めて三秒数え、苦しさを覚えてからゆっくりと吐き出す。なるべく見ないよう心がけていても、左手が無事かどうかが気になって、視線はついつい、左側に流れた。
 膝目掛けて垂れ下がった糸が、細長い輪を作っていた。プラスチックのボタンに開けられた穴を通り、鋭い先端を持つ針がゆっくり布に沈んで行く。反対側から尖端が顔を出した後、雲雀は穴の空いた尻を軽く押して一旦手を離し、突き出ている頭を抓んで捻りながら引っ張った。
 しゅ、と糸だけが布の中に残される。緩まないよう、余剰が出ないようしっかり引っ張って、再び袖目掛けて針を進める。
 生身の肌にいつ掠めるか、分かったものではない。だがビクビクして震えていたら、針を操る雲雀の手元が狂いかねない。
 にっちもさっちもいかなくて、綱吉は身を縮こませて時間が過ぎるのを待つしかなかった。
 何事も起きませんようにとひたすら祈り、上機嫌にしている雲雀を時折盗み見ては、そうと気付かれぬ程度に溜息をつく。いったい彼は、どれだけ頑丈にボタンを留めるつもりなのだろう。
「簡単に外れないようにしないとね」
「……そうですね」
 風紀の厳守は、まず身なりから。シャツをスラックスから出していたり、ネクタイを結んでいなかったりするところから、徐々に風紀が乱れて行くのだといって、彼はシュッ、と糸を強く引っ張った。
 ピンと伸びた白い木綿糸越しに告げられた言葉に、綱吉は沈痛な面持ちで頷いた。
 そう。彼に袖のボタンが取れかけているのを見付かったばかりに、綱吉は此処に連れてこられたのだ。
 たかがボタン、されどボタン。いつ落ちても可笑しくない状態だったのを見咎められて、裁縫道具の有無を問われた。家庭科の授業は明後日で、今日は所持していない。正直に告げると、問答無用で応接室まで引っ張られた。
 お陰で一時間目は完全に遅刻だ。間に合ったところで、どうせ授業内容は碌に頭の中に入って来ないのだから、教室にいようが、いなかろうが、大差ないのだけれど。
 器用に針を操る男を盗み見て、彼はちらりと壁の時計を見た。風紀委員長に連れ去られるところは、登校中の大勢の生徒に目撃されている。そのうちの誰かが、欠席の理由として教師に報告してくれていればよいのだが。
 堂々とサボれるのは嬉しいが、身動きもままならないこの状況は辛い。
 早く終わってくれるよう願い、綱吉は凝り固まっている指の関節を揺らした。
「怪我したいの?」
「だって、疲れたんですよ」
 同じポーズのままでいるのは辛い。たまには動かせてくれと頼めば、雲雀はいかにも仕方なくといった様子で左手を解放した。
 針はまだ繋がったままだ。よれよれの糸にぶら下がっていたボタンも、今では布にぴったり張り付いていた。
 後一回くらい穴に通してやれば、もう当分外れることもなかろう。右袖に比べると、随分頑丈になった。
 こんなにもしっかり縫い付ける必要はなかったのではないかとも思うが、言って雲雀を不機嫌にさせる方が怖いので黙っておく。なにせ彼の手には、まだ充分凶器になるものが握られたままなのだ。
 じっと見ていたら、視線に気付いた雲雀が不遜に笑った。
 右の口角を歪めて不吉な表情を作り、スッと音もなく動いて切っ先鋭い針を綱吉に向ける。
「ひっ」
「怖いの?」
「当たり前です!」
 先端恐怖症とまではいかなくても、針を顔の近くに持ってこられたら、誰だって怖いに決まっている。手違いで目にでも刺さろうものなら、大変だ。
 大声を張り上げて仰け反り、綱吉は出来るだけ針の先から距離を取って唇を噛んだ。
 ここまで怯えられるとは思っていなかったのだろう、雲雀は一寸驚いた顔をして手を引っ込めた。そのまま自分の方に先を向けて、不思議そうに首を傾げる。
「そんなに?」
「自分でやるのと、人にやられるのとじゃ、全然違います」
 そんな事も分からないのかと腹を立てて、綱吉は渋い顔をした。再び針を向けられそうになって身構えて、手負いの獣のような態度を雲雀が笑った。
「そうかな」
「ヒバリさんにもやってあげましょうか」
「いいよ。本気で刺されそうだ」
 分かっていない顔をして呟いた彼に皮肉を投げかければ、あさっての方向に打ち返された。
 確かに、今、針を渡されるのは危険だ。散々脅かされた恨みを込めて、雲雀の太腿に突き刺しかねない。光景をリアルに想像して、綱吉は背筋を戦慄かせた。
 実践してもいない、しかも他人に向けての攻撃をわがことのように想像して身震いした彼に肩を竦め、雲雀は作業に戻った。
 四つ開いた穴に交差する線を一本増やして、裏側に通してしっかり糸を扱く。腕ごと釣り上げられる感覚に、綱吉は眉を顰めた。
 後は糸の始末をして、余分を切り落とすだけ。ようやく解放されるのかと安堵に包まれた矢先、ソーイングケースを弄っていた雲雀が急にきょろきょろし始めた。
「ヒバリさん?」
「鋏、知らない?」
 先ほど、糸を切るときに使った鋏が見当たらない。まさか尻に敷いているのかと思って腰を浮かせてみたが、ソファとの間には何も落ちていなかった。
 第一上に座っていたら、固いものがあると先に気付いて然るべきだ。自分の行動の間抜けさに後から思い至って、綱吉はひとり赤くなった。
 雲雀も針を高く掲げたまま、視線を左右に動かした。テーブルの上や下、足元を確認するが、何度見てもそれらしき物体にいきあたらない。鋏といっても、持ち歩き出来る小さなソーイングキットの中に入っているようなものだ。掌よりも小さくて、刃だってさほど鋭くはない。
「覚えてないんですか?」
「そこに置いた気がするんだけど」
 此処まで来ておきながら、なんたることだろう。余った糸は全長五十センチ近い。針を抜けば危険は去るが、そんな長い糸を垂らしたまま行動するのも格好悪いだけだ。
 裁縫用でなければ、執務机を漁れば出て来るだろう。だが取りに行くのも面倒臭くて、雲雀は考え込み、口を尖らせた。
「仕方ないか」
「ヒバリさん?」
 ぼそりと呟いて、彼は綱吉の手を取った。膝の上で固定して、素早く針に糸を巻いて引き抜く。瞬く間に結び目が出来た。これでボタンを止めた糸が簡単に解れることはなくなった。
 後は余剰を切り取るだけ。鋏もなしにどうするのか、といぶかしんで見守っていたら。
 ふっと息を吐き、彼は綱吉の手に顔を寄せた。
「……っ」
 素肌を撫でた温かな微風に、何の関係も無いはずの背中に悪寒が走った。鼻から抜ける吐息を零して、雲雀は薄い唇を開くと、長く伸びる糸に鼻先を寄せた。
 どきりと心臓が跳ねて、綱吉は思わず息を止めた。知らず赤くなる顔と高まる鼓動に上唇を噛んで、琥珀色の瞳を大きく見開いて目の前で起ころうとしている出来事を食い入るように見詰める。
 瞬きすら忘れている彼の手元で、雲雀は木綿糸を口に含み、僅かな唾液で湿らせた後に犬歯に擦りつけた。
 ぎざぎざした表面に往復させて咬み千切って、舌に残った細かな繊維の違和感に眉を顰める。濡れた口元を拭いながら顔を上げた彼は、そこでようやく、呆然としている綱吉に気付いて首を傾げた。
「沢田?」
 あっという間だった。慣れていると思わせるに足る見事な手捌きに呆然として、呼びかけにもすぐに応えられない。
 名前を二度繰り返されてやっとハッとして、長く止めていた呼吸を再開させて咳き込む。
「うぇっ、ふぁ、ひゃい!」
 そんな最中に急いで返事をしようとしたものだから、噛んでしまった。
 完全に裏返った甲高い声にぎょっとして、雲雀が目を見開いた。珍しい彼の表情にまた顔がカーッと熱くなって、綱吉は金魚のように口をパクパクさせると、パッと目を逸らして居住まいを正した。
 両手を膝に乗せて強く握り、肩を怒らせて四肢に緊張を張り巡らせる。
「あ、あり、ありがっ、とう、ございます」
 舌の根まで引き攣って、上手に言葉が操れない。詰まりがちに礼を言えば、雲雀は針に残った糸を引き抜き、指にくるくる巻き付けた。
 役目を追えた細い縫い針を、専用のケースに押し込む。こうしておけば間違って落としても、踏んで怪我をしたりする事はない。そのほかの道具も手早く片付けて、彼は最後、座っているソファの足元を覗き込んだ。
 急にぐっ、と前のめりになられて、綱吉は驚いて仰け反った。黒髪を床目掛けて垂らした青年は、その三秒後には元の体勢に戻り、若干乱れた前髪を気にしながら右手に掴んだものを高く掲げた。
「あったよ」
「ああ、鋏……」
 矢張りソファの下に潜り込んでいたのだと、遅ればせながら理解して、綱吉は頷いた。
 女性が鞄に入れて持ち歩くには少し大きいが、家庭科の授業で使うには小さすぎる箱の蓋を閉めて、雲雀は何かの合図か、角をコン、と叩いた。
「慣れてるんですね」
 彼に縫いつけてもらったボタンを撫でて、小声で呟く。音を拾い上げた男は不思議そうな顔で振り返り、はにかんだ。
「そうでもないよ」
 ソファの上で身体を前後に揺すった後、タイミングを計って雲雀は立ち上がった。元は菓子か何かが入っていたのだろう金属製の缶を手に、執務机へと戻って行く。
 遠ざかる背中を少し寂しげに見送って、綱吉は頑丈過ぎる縫い糸に爪を立てた。
「外さないでよ。折角やってあげたんだから」
「分かってますよ」
 執務机の角を叩いた雲雀に見咎められて、口を尖らせて頷く。しかし無意識のうちにまた触っていて、指摘された綱吉は急いで袖のボタンホールにボタンを捻じ込んだ。
 雲雀が咬みきった糸は、まだほんのり湿っていた。それが手首の内側に触れて、即座に綱吉の体温を吸い込んだ。
 温い感触が走って、背筋が粟立つ。どくん、と強く心臓が跳ねて、手首の血管がわけもなく大きく膨らんだ気がした。
 布と釦との間が詰まっているので、若干窮屈さが増したのも気になる原因のひとつだった。袖の具合を何十回と確認している彼に肩を竦め、雲雀は椅子を引いて腰を下ろした。
「そんなに気になる?」
「え? ――や、いえ」
 あまりしつこく弄っていたら、雲雀に対して失礼か。
 些か不機嫌になっている彼に気付いて慌てて首を振り、綱吉はなるべく触らないように、と右手で袖口を握り締めた。
 彼の指や、吐息が、今もまだそこにあるようだ。自分の体温を彼のそれに置き換えてぼうっとしていたら、引き出しに裁縫箱をしまった雲雀が小さく笑った。
「玉結びも出来ない子がいるなんて思わなかった」
「どうせ、俺は不器用ですよ」
「不器用以前の問題でしょ。あんなに簡単なのに」
「ヒバリさんにはそうかもしれないけど、俺には難しいんです」
 最初、雲雀は自分でやるように言った。しかし道具を渡されても、綱吉はなかなか動き出そうとしなかった。
 自分でやるには先ず制服を脱がなければならないし、生来の不器用さに気後れが生じた。なにせ雑巾を縫っていたら、間違って自分のシャツも一緒に縫ってしまったことさえあるのだ。そんな自分が、いくら利き手が右だからといって、服を着たまま釦を留められるわけがない。
 あれこれ言い訳を重ねて、帰ったら母にやってもらうからと泣きついたところで、黙って聞いていた雲雀の堪忍袋の緒が切れた。
 痺れを切らした彼に道具の一切を奪い取られて、結果、冒頭に至る。
「簡単なんだよ。君は少し、諦めるのが早すぎる」
 頬杖を就いた雲雀が手厳しいひと言を吐いて、目を眇めた。
「だって、も止めた方がいい。言い訳を重ねたところで、出来る事が増えるわけじゃないんだしね」
「うぐ」
 正論過ぎて反論の余地もない。押し黙り、綱吉は足をじたばたさせた。
 そうは言われても、苦手なのだから仕方が無いではないか。失敗ばかり重ねて来たものだから、なにかに挑戦するのにも、いつも尻込みしてしまう。また駄目だったら、とやる前から考えて、怖がって、結局巧く行かなくて落ち込んで。
 なんでも出来る雲雀とは違うのだ。一緒にしないで欲しいと訴えれば、彼は機嫌を損ねたのかむっとして、気配を尖らせた。
「僕だって万能じゃないんだし。出来ないことだってある」
 最初から上手にやれたことなどないと言い返されて、綱吉は眉間に皺を寄せた。目を吊り上げて、牙を剥く。
「嘘だ。信じられない」
 勉強だって、運動だって、委員会の仕事だってソツなくこなしているくせに、どの口がそんな事を言うのか。
 声を荒げた綱吉に引きずられ、雲雀も表情を険しくした。反抗的な態度に腹を立てて、椅子を蹴り飛ばして立ち上がる。机を力いっぱい叩いて音を響かせるが、それしきで怯える綱吉ではなかった。
 益々苛立ちを募らせる彼に歯軋りして、雲雀は背筋を伸ばした。右手を横に薙ぎ払い、衝動のままに叫ぶ。
「僕はね、だから君みたいにわら……――!」
 ボリュームを最大にして怒鳴り、途中まで言ったところではたと我に返って息を飲む。目を丸くした綱吉もまた、半端なところで切れてしまった彼の言葉に唇を震わせた。
「わら……?」
 その後、どんな言葉が続く予定だったのだろう。
 先ほどまでの怒りをどこかに吹き飛ばし、ドキドキしながら待つ彼の赤い顔を睨みつけて、雲雀は何故か地団太を踏んだ。やおら机を回りこんで一度来た道を戻り、
「ひばりさ――んがっ」
「五月蝿いよ!」
 ソファに居残る綱吉の間後ろについたと思いきや、いきなり拳骨で無防備な頭を殴り飛ばした。
 首がガクンと前に吹っ飛んで、綱吉は珍妙な悲鳴をあげてソファに倒れこんだ。
 痛い。死ぬほど痛い。
「ぐあぁぁぁぁ」
 確実にタンコブが出来ている後頭部を抱きかかえてのた打ち回り、勢い余ってソファからも落ちた。泣きっ面に蜂状態の彼を見下ろして、雲雀はふん、と鼻を鳴らし、満足げに頷いた。
 ひとりで勝手に溜飲を下げている彼を涙目で睨み、綱吉は全身が訴える激痛に溜息を零した。
「なんなんですか、もう」
 嘘つき呼ばわりしたら、いきなり殴られた。
 確かに怒らせるに足るひと言だったと思うが、だからといってこうも手酷く痛めつけられるいわれはない。せいぜいデコピン一発で済むところを、渾身の力を込めて吹っ飛ばされた。
 首がちゃんと胴体にくっついているかどうかを確かめて、ヒリヒリするタンコブをそっと宥める。堪えきれず頬に零れた涙ひと粒に目を向けて、雲雀は意味深に笑った。
 伸びて来た手が湿った肌に触れた。
「ヒバリさん?」
「僕は、君みたいに泣けないんだよ」
「……」
 涙の跡を拭いながら言われて、綱吉は一瞬息を飲み、直ぐに脱力した。
 なんだか都合よく誤魔化されてしまった。結局彼が言いかけた言葉の続きは聞けず、違うものに置き換えられてしまった。
 だが、なんとなく理解出来た。雲雀は感情のうち喜と怒は豊富だけれど、残るふたつについてはあまり大っぴらにしない。綱吉は未だ、彼が泣いているところを見た事が無い。
 しつこく頬を擦る手を捕まえて、彼はふっ、と笑った。肌に触れた微風に目を細め、雲雀が小首をかしげた。
「沢田?」
「じゃあ、もしヒバリさんが泣きたくなったら、俺の胸、貸してあげます」
「へえ?」
「だから遠慮せずに、いつでも言ってくださいね」
 変な話だが、ひとつだけ雲雀に勝てるところが見付かった。相好を崩して胸を張った綱吉に目尻を下げて、雲雀が身を乗り出した。
「男に二言はない?」
「じゃ、約束」
 指切りだと左小指を差し出されて、彼は幸せそうに笑った。

2011/12/15 脱稿