擽弄

 銀のレール上を横に滑り、二センチ弱の厚みを持つ扉は、ガラっという音と共に開かれた。
「シャマル、居る?」
「おー」
 中を覗きこむと同時に問えば、思っていたよりも近い場所から返事があった。首から上だけを室内の押し込み、身体はドアの外という前屈みの姿勢を取っていた綱吉は、声の主を探して目を凝らした。
 奥に置かれた机は相変わらず資料が山積し、酷い状態だ。しかしその前にある椅子は空っぽで、背凭れは斜めを向いていた。
 返事はしたのに、姿が見えない。何処へ行ったのだろうかと首を傾げていたら、右手で支えたままだった保健室のドアがいきなり真横に逃げていった。
「うわっ」
 引きずられ、バランスを崩してよろける。もう少しで転ぶところを寸前で堪え、踏み止まった彼は、一瞬で倍速を記録した心臓を宥めて肩で五度ばかり息をした。
 脂汗が額に滲み、頭の中を熱が駆け巡る。笑う膝を叱咤して崩れた重心を戻した彼は、保健室の内側でしたり顔で笑っている男を思い切りねめつけた。
 よれよれの白衣に袖を通した髭面の男の後ろには、簡易キッチンがある。ガスコンロがひとつに、銀色の安っぽい流し台。コンロに鎮座するヤカンからは白い湯気が濛々と立ち込めており、傍には黒色のマグカップもしっかり置かれていた。
「どうした」
 そちらに居たのかと、ドアの右手壁際に立つ彼を睨み、綱吉は左足を庇うように室内に入った。勢い持たせて乱暴に戸を閉めれば、反対側を持ったままだったシャマルは大慌てで手を引っ込めた。
 一瞬で不機嫌度合いを増した彼を呵々と笑い飛ばし、芳しく香るカップを持ち上げる。差し出して飲むかと一応誘ってきたが、綱吉は頬を膨らませたまま無言で首を振った。
「そうか。で、どうした」
「足」
 痛いのだとぶっきらぼうに言い、綱吉は先に歩き出したシャマルを追って奥へ向かった。
 治療用の器材を入れたワゴンを左に見て、緑色の丸椅子に腰を落とす。シャマルは熱いコーヒーを隙間も殆ど無い机の上に押し込み、崩れかけた本の山を宥めて背凭れ付きの椅子に座った。
 足で床を蹴って半回転させ、綱吉に向き直って顎鬚を撫でる。
「階段から落ちでもしたか」
「違う、転んだ」
「そっちか」
「正確には、後ろからぶつかられて転んだ」
 自分の不注意からではなく、教室ではしゃぎまわっていた連中に体当たりを食らわされて、机を巻き込んで倒れて怪我をしたのだ。その辺は勘違いしないで欲しいと綱吉は語気を強めて訴え、にやにや笑っている彼の脛を右足で蹴り飛ばした。
 濃い灰色のズボンに、綱吉の上履きの跡が薄らと残された。汚すな、と鋭い声で叱られて首を引っ込めた彼は、着席した事で幾分和らいだ痛みを思い返して苦い顔をした。
 見せろと言われ、背中を丸めて前屈みに姿勢を作りかえる。足首を覆う裾を両手で捲り、傷に触らぬよう慎重に布を折り畳んでいった。
 膝小僧とその周囲に、見事なまでの青あざが出来上がっていた。膝頭のほぼ中央には赤い筋が数本入り、巻き込まれた繊維がこびり付いて傷口を汚していた。
「酷いな」
「冷やした方が良い?」
「先に消毒だろ」
 露骨に嫌そうな顔をし、身を乗り出していたシャマルが後ろへ背筋を逸らした。近付いてきたかと思えば距離を取られ、猫背を直した綱吉はじくじくする痛みに奥歯を噛んだ。
 短いやり取りの末、ワゴンを引き寄せたシャマルが銀色のポットの蓋を開けた。ピンセットを握り、中に入っていたものを抓み取る。濃い臙脂色の消毒液を浸した脱脂綿を傷に押し当てられた瞬間、冷たさが即座に熱に変わり、綱吉は必死に悲鳴を堪えた。
 抉るような痛みに、反射的に膝から先が跳ね上がる。またも蹴り飛ばされるところで、シャマルは寸前で避けて舌打ちした。
「じっとしてろ」
「だって」
 綱吉が男だからか、シャマルの手つきはどうにも荒っぽい。ただ本来なら、男子の治療行為は一切お断りの彼なので、こうやって消毒をして傷口にガーゼを巻いてくれるだけでも、贅沢と思うべきなのだろう。
 半べそをかいて鼻を鳴らした綱吉は、包帯に覆われていく足を見ないように視線を他所向けた。
 壁際に置かれた薬品棚には、不用意に学生が手を出さないようにと鍵がかけられている。半透明のガラスの所為で中ははっきりと見えないが、瓶は種類別に分けて並べられ、一応整理整頓は出来ているようだった。
 反して机の上は、ゴミの巣窟にも見える。灰皿には煙草の吸殻が山盛りになり、書類が無造作に置かれてその上に複数の本が重ねられていた。真面目な医学書を読んでいるようならばまだ救いがあるが、残念ながらちらりと見えた表紙は卑猥な俗物の代表格――つまりはエロ本だった。
 そういうものは学生の目に留まらない場所に、こっそり隠しておいて貰いたい。いや、そもそも学校にそういった類のものを持ち込むこと自体、問題があるのだが。
 風紀委員に見付かったら、一発で彼は失職だ。何かと手厳しい並盛中学の実質的な支配者を思い浮かべ、綱吉は終わったぞ、と言われてやっと自分の左足に視線を戻した。
 試しに膝を軽く曲げて伸ばすが、包帯が動きの邪魔になることはなかった。多少関節が硬く感じるが、痛みも薄れており、これならば午後の授業も問題なく受けられそうだった。
「体育は無いな」
「うん。数学と、美術」
「寝るなよ」
「分かってるよ」
 学年最下位の成績を誇る彼の学力を言外に指摘し、シャマルは余った包帯を巻いてワゴンへ戻した。
 不貞腐れた声で言い返した綱吉だが、正直なところあまり自信は無い。昼食に奈々お手製の弁当を食べたばかりで腹も膨れており、陽射しも穏やかで温かく、今日の午後は絶好の昼寝日和だ。
 想像するだけで欠伸が漏れて、笑いながらシャマルに頭を小突かれた。
「戻しとけよ」
 その手で下を指差され、目を向ければ左足の膝までズボンを捲り上げたままだった。忘れていたわけではないが、言われなければ思い出さなかった綱吉は、瞬時にばつが悪い顔をして両手を伸ばした。
 幾重にも折り重ねていたものを逐一伸ばすのは面倒で、端を捲ってから一気に膝の下に押し退ける。自らの重みで布を広げていくように仕向けたのだが、勢いが足りなかったようで脛の手前で止まってしまった。
「ズボラしてっからだ」
「五月蝿いなあ」
 いちいち嫌味を言うシャマルを邪険にし、綱吉は前屈みに姿勢を作り変えた。太腿に胸がつくくらいまで身を沈め、不自然に角張っているスラックスの表面を撫でていく。
 その最中、下向いた彼の胸元からボトリ、と何かが落ちた。
「落ちたぞ」
「んあ、おっと」
 胸ポケットから滑り落ちたのは生徒手帳で、ちょうど椅子の斜め左側に着地を果たした。角を床にぶつけ、一回転して裏側を上にして寝転がる。かなり使い込まれており、表紙の角は折れ曲がり、色がくすんで手垢が目立った。
 落ちた衝撃で、中に挟まれていたものがはみ出ている。
 良く見えないが、写真のように思えてシャマルは椅子から身を乗り出した。取ろうと手を伸ばすが、一足先に姿勢を低くしていた綱吉が攫っていく。そしてシャマルに見えないようにしながら、頭が出ていたものを手帳に押し込んだ。
 妙に慌しい動きに、行き場をなくした手でコーヒーカップを探り当てたシャマルは顔を顰めた。
「なんだ?」
「なんでもない、なんでも」
 なにをそんなに、焦って隠そうとするのか。挙動不審に首を振り、手帳を胸ポケットに押し込んだ綱吉は早口で繰り返した。
 わざわざ二度も言ったところからして、充分怪しい。シャマルは若干冷めたコーヒーで喉を潤すと、小さな目を一層細めて顎鬚を撫でた。
「おい」
「さーって、手当てもしてもらったし、教室に戻ろうかな」
 非常に白々しく言い、彼はシャマルから目を逸らした。椅子の上で身体の向きを変えて、膝の上で手を打ち鳴らす。
 いつもなら、どれだけ早く帰れと言っても長々と保健室に居座るくせに、この態度はやはり妙だ。シャマルは怪訝に眉を寄せ、自分の顎をトントン、と指で叩いて考え込んだ。
「写真、だな」
「いや、あ、うん。まあ……そう」
 そっぽを向いたまま居住まいを正し、綱吉は言いづらそうに言葉を濁し、間を置いて最後は頷いた。
 下手に誤魔化せば余計に突っ込まれるのは分かっているので、曖昧に受け流してしまおうと考えを改めたのだろう。だがそうは問屋が卸さない。シャマルは考え付くあらゆる可能性を頭の中にはじき出し、恐々と振り向いた綱吉に意地悪い笑みを浮かべた。
 他人に見せたくないけれど、常日頃から持ち歩いておきたい写真。
 ならば写っているのは。
「さては、エロイ写真だな」
 綱吉とて健康な男子中学生だ。学校に居る間でも、そういう気分になることはあるだろう。
 したり顔で言い放った彼だったが、綱吉は一瞬きょとんとしてから、頬の強張りを緩めて笑った。
「残念、外れ」
 自信満々に言ったところが、また可笑しい。
 誰もがシャマルと同じ頭をしているとは、思わないで欲しい。確かに綱吉は、それなりに好奇心旺盛な年頃の青少年ではあるが、そういったものを手帳に挟んで持ち歩くところまで、餓えてはない。
 それにこれは、遅刻時に風紀委員に提出する手帳でもある。如何わしいものを入れておいて、彼らに見られたら一大事だ。
 少し考えれば分かることなのに、いったいこの男の思考回路はどうなっているのだろう。
 ケタケタ笑う綱吉に唇を尖らせ、シャマルは椅子を軋ませて腕組みを作ると、不貞腐れた顔をして背凭れに身を沈めた。
「んじゃ、なんだ」
「内緒」
「んだとー、この。教えろよ、気になるじゃねーか」
「シャマルには教えな~い」
 生意気を言う綱吉を殴るポーズだけ取り、両足で床を叩いて姿勢を前に倒したシャマルに、綱吉も怯えるフリだけをして喉を鳴らした。
 両手を頭の上にやって首を亀のように引っ込めて、椅子の上でくるりと反転して舌を出す。実際、後生大事に持ち歩いているものは、他の人から見れば特別なものだと感じないものだろうが、綱吉にとっては宝物のひとつであり、シャマルにだけは知られたくないものだった。
 胸ポケットの厚みを見下ろし、触れようと左手を下ろす。刹那、後ろから伸びてきた腕が彼の脇を走り抜けた。
「ぬわっ」
「そういう事言う奴は、こうしてやる」
 反対側にも白衣の袖が回り込んで、腰を抱えられた。椅子から掬い上げられそうになって、咄嗟に抵抗すれば、踵がパイプ椅子の細い脚を蹴り飛ばした。
 倒れはせず、綱吉の体と一緒に引っ張られた。四本あるうちの前二本が浮き上がり、後ろ二本が床を削ってガリガリと音を立てる。尻から伝わる振動に巧く喋れず、背中から床に落ちる恐怖と戦っているうちに、行き着くところに至ったのか、椅子は再び四本立ちに戻った。
 脇から胴を抱え込んでいたシャマルの手も解け、引っ込んでいく。いったいなんなのかと冷や汗拭おうとして息を吐いた綱吉は、
「……ひゃっ」
 直後に襲って来た感覚に背筋を震わせ、全身に鳥肌を立てた。
「や、ちょっ……止めろって、シャマル!」
 遠ざかっていくと思われた彼の手は、綱吉の脇腹に残された。あまつさえ五本の指を蠢かせ、制服の上から擽り始める。
 ぞわぞわして、もぞもぞする。皮膚の薄い敏感な箇所を掠めていく指に、堪えきれず綱吉は椅子の上で身を捩って腰を浮かせた。しかし逃がしてはもらえず、益々勢いを早めて合計十本の指が綱吉を弄り回した。
「やだ、やめ……あはは、くすぐった、もっ、いい加減に」
「まーだまだ、お仕置きはこんなんじゃ終わらねーぞ」
 喉を擦り、ひーひー言って苦しそうに息を吐くが、シャマルの手つきは少しも緩まない。起き上がろうとした小さな身体を椅子に押し戻し、綱吉が悶える中、こっそりと上向けた左手で彼の胸ポケットを小突いた。
 けたたましい笑い声が、本来静かであるべき保健室にこだまする。足を踏み鳴らして騒音を撒き散らし、綱吉は目尻に涙を浮かべてぜいぜいと肩で息を整えた。
 それを合図にしたわけではなかろうが、シャマルの攻撃は止まった。前のめりに姿勢を崩し、辛そうに全身を使って息をする彼を見下ろして満足げに口元を歪め、シャマルは左手に握った掌サイズの手帳に爪を立てた。
「大人を馬鹿にするからだ」
「は、はー……くるっ、し――って、ああ!」
 大きく息を吸って吐き、喧しい心臓を宥めて振り向いた綱吉が、空っぽになっている左胸を叩いて悲鳴を上げた。
「返せよ!」
 即座に椅子を蹴って立ち上がるが、それより早くシャマルは身を起こし、身長差にものを言わせて手帳を高く掲げた。ジャンプしても届かないところまで持って行き、息せき切らしている綱吉の悲壮な表情を意地悪く笑い飛ばす。
 最初からこれを確保するのが目的だったのだ、中身を見ずして返却するわけがない。
「止めろって、返してよ。シャマルってば」
「ダメだね」
 綱吉が何度も跳びあがって腕を真っ直ぐ伸ばすが、後一歩のところで届かない。半泣きの表情で鼻を鳴らし、唇を噛み締める様はとても可哀想であり、また可愛らしかった。
 そんな顔をするから、つい苛めてしまいたくなるのだと心の中で呟き、シャマルは地団太を踏んでいる彼の頭を右手で軽く叩いた。
 撫でられても、慰めにすらならない。赤い頬を丸く膨らませ、左肩を下ろした瞬間を狙って綱吉はまたも手を伸ばしたが、あっさりと躱してシャマルは問題の物を探して手帳を開いた。
 開き癖がついているページを選んだら、外れだった。但し両側からの圧迫が弱まったからか、挟まれていた写真は下辺から足を出し、そのままするりと狭い空間から滑り落ちていた。
「あっ」
 見送った綱吉が慌てて屈むが、椅子の下に落ちたので直ぐには届かない。すかさず、日頃の愚鈍さが嘘のような機敏さを発揮したシャマルが反対側から拾い上げ、椅子ごと迫る綱吉を押し返し、印画紙を覗き込んだ。
 どこかの公園、十人近い集団。レンズを向けられているのに気付いていない人も混じり、大勢の視線は各々好き勝手な方向を向いていた。
 桜が咲いている、地面にはレジャーシートが。重箱の料理や寿司が所狭しと並べられ、空の酒瓶やジュースの入っていたペットボトルがそこかしこに転がっていた。
 誰もが笑って、楽しそうにしている。
「……こんなの、いつ撮ったんだ」
「前に、花見しただろ。みんなで」
 風紀委員が占領していた場所を、雲雀との少し卑怯な勝負に勝ったことで手に入れて、ドンちゃん騒ぎをした日だ。
 言われて思い出した彼は、上目遣いに睨む綱吉の赤い顔と写真とを見比べ、緩慢に頷いて顎の無精髭を撫でた。
 目の前にいる少年が、絵の中では満面の笑みを浮かべてピースサインをしている。酔っ払った赤ら顔の男が、その隣で綱吉の細い肩を抱き寄せていた。
 ネクタイを頭に巻いて、だらしなく笑って。けれどしっかりカメラ目線。
 いつシャッターを切られたのか、まるで覚えていない。
「ンで、こんな」
「しょうがないだろ、それしかないんだから」
 裏家業で暗殺も請け負っているシャマルは、写真に顔を残さないように一応配慮している。だから綱吉がどんなに頼んでも、必ず断っていた。
 酔っ払って前後不覚になっていなければ、こんなこと、許すわけが無い。彼が覚えていないのも、当然だった。
 分かっていても、綱吉としては面白くない。唇を尖らせて息を吐き、惚けているシャマルの脛を蹴って横から写真を奪い取った。
 端が折れてしまい、舌打ちが響く。我に返り、シャマルは右手を差し出している綱吉に手帳も返却して、雑に頭を掻き毟った。
 まさかそんな写真を、肌身離さず持ち歩かれていたのかと思うと、複雑な気分になる。しかも写っている自分は、みっともなく酔っ払って醜態を晒しているのだ。
 格好悪すぎる。
「あー……」
 俯いた綱吉が手帳を広げ、折れ目がついた写真をなぞって挟み、閉じた。押し出された空気が彼の前髪を擽り、揺らす。
 何かを言わなければいけないと思うのに、言葉が思いつかない。半端に伸びた髭を頻りに引っ掻いていたシャマルは、浮かせた視線の先、壁のスピーカーから響くチャイムの音に顔を顰めた。
 綱吉も視線を上げ、胸ポケットに生徒手帳を押し込んだ。彷徨った瞳が壁時計を射抜き、午後からの授業開始五分前との認識を新たにして自嘲気味に笑った。
「俺、教室帰るね」
「ああ。……と、ちょっと待て」
 授業に遅れるのは良くない。爪先で床を叩き、背中に回した両手を結び合わせた彼を見送ろうとして、思い直したシャマルが綱吉を呼び止めた。
 早々に歩き出そうとしていた彼が肩越しに振り返り、まだ何かあるのかと小首を傾げた。
「なに?」
「あー、いや。……そうだな、今度、どっか行くか」
「え?」
「桜はもう、終わっちまってるけどな」
 フケを散らして髪を掻き回し、きょとんとする綱吉から遠くへ視線を投げたシャマルが、アルコールが原因ではない頬の赤みを隠して言った。窓に顔を向け、綱吉には背中を向けた彼が今どんな顔をしているのかは、想像に難くない。
 元から大きな瞳をより大きく見開いた綱吉の頬も、にわかに緊張と興奮で赤く染まっていった。
「カメラは?」
「好きにしろ」
「そうする!」
 高らかに笑い声を響かせ、綱吉はその場で飛びあがった。
 若干悔しげにシャマルが振り返り、さっさと教室に戻れと犬を追い払う仕草を取る。
 動物扱いされるのをいつもは怒る綱吉だが、今日ばかりは寛大な気持ちで許してやり、ガッツポーズと共に保健室を飛び出して行った。

2009/4/29 脱稿