春愁

 きっと、多分、一生忘れない。
「もういいですよ。外してください」
 振り返ると同時に言った言葉に頷き、額から鼻筋にかけての一帯に巻きつけた目隠しを外した彼は
直後に目を見開き驚いた様子で肩を震わせた。
 暗闇の中、朧月に照らされた枝垂桜が吹く風に流されて、日中に見るよりも色を強めた桜が紅を一斉に綻ばせる。穏やかな風に靡く枝からこぼれ落ちる無数の花びらを前に、彼は呆然と佇み、背後を振り返ろうとして姿勢を崩した。
 ふらり、と力をなくした彼の両足が左右によろめき、膝が折れて体勢が傾く。慌てて綱吉の伸ばした腕がその彼を支え、しかし一気に圧し掛かられた体重を受け止めきれず、結局ふたりして固い土の上に転がり、頭を打った綱吉が目の前に星を散らせた。
 身動ぎした雲雀が、辛そうに顔を歪めて噛み締めた唇の隙間から息を吐く。
「お、も……」
 雲雀とて小柄で細身だが、綱吉はそれに輪をかけて華奢な体躯をしている。腕力は言うに及ばず、当然の帰結として彼は全身から力を失った雲雀に押し潰されて内臓を圧迫させた。
 苦しげに呻き、身体の両側に投げ出していた腕を取り戻して雲雀の肩を押し返す。けれど、びくともしない。
「ヒバ、リ、さん」
「なに考えてるの」
「だって……おもいっ」
 途切れ途切れに名前を呼んで、顔の横から耳に直接響いた声に心臓を竦ませる。責められるのは分かっていたので、あらかじめ言い訳は色々と考えていたものの、今の一撃で見事に霧散してしまって、頭の中にはもう何も残っていなかった。
 兎も角この重圧から逃れようと足掻くのに、雲雀はこんなにも重かっただろうか、まるで歯が立たなかった。懸命に腕に力をこめ、こめかみに青筋さえ浮かべて踏ん張るのに、彼の身体はちっとも綱吉から離れようとしない。
 肘を曲げて小手から先を緩く傾斜している地面に押し当て、足も綱吉の身体を挟んで肩幅に広げている雲雀の、確実にわざとだと分かる体勢には、まるで気付かない。綱吉は首をも振って歯を食いしばるが、そんな彼の努力を嘲笑うかのように、雲雀は益々自分の体重を利用して彼を地面に縫いつけ、行動の自由を奪っていった。
「ヒバリさん、重い、です。潰れる、死ぬ……」
「死なないよ」
 降参だと両肩から力を抜いて地面に落とし、裏返した掌でほんの少し湿り気を帯びた大地を叩く。それを合図に雲雀から与えられる荷重は若干減り、苦しかった呼吸は多少楽になったけれど、完全に退いてくれるわけではなくて、綱吉は不満げに唇を尖らせた。
 拗ねている彼を感じ取り、長い間綱吉の左肩口に額を埋めていた雲雀がゆっくりと首を起こした。肘を立てて胸元に空間を開き、ただ下半身はそのままにさせて綱吉が逃げられぬよう封じ込めたまま、彼はまだ少しだるそうな表情で首を振った。
「つらいですか?」
 その色の冴えない肌を気にして綱吉が不安に声を揺らしたが、これにも首を横へ振って答え、雲雀は自分の身体を支える腕の範囲を狭めた。
 綱吉の髪に左手でそっと触れ、落ちていた枯葉を絡めている毛先を解く。カサカサという乾いた音が上の方からするだけで、見えはしない綱吉は、それが悪い結果を齎すものではないと雲雀の落ち着いた様子から悟り、強張りかけた表情を解いた。
 自分もまた左手を持ち上げ、上に被さる彼の頬に指の背で触れる。滑らかな肌を撫でて何度か往復させているうちに、行き過ぎた爪先が彼の口端に当たって止まった。
「……」
 音もなく唇が開き、表情がしまった、という感情を雄弁に語る。僅かに見開かれた瞳を至近距離で覗き込み、雲雀は沈んでいった彼の指を目で追って、再び視線を最初の位置に戻した。
 気まずげに苦笑いを浮かべている綱吉の、小粒で少し上向いている鼻の頭に触れるだけのキスを落とす。
「少しは、楽かな」
「俺は背中、痛いんですけど」
「僕は今、立てないよ」
 足に全く力が入らない、と口では言うけれど、ならばさっきの圧力はなんだったのか。ぎゅうぎゅうに押し潰された圧迫感が蘇り、頬を膨らませた綱吉のその丸く赤い肌にも口付けて、雲雀は密やかに笑う。
 彼らの上では、下弦の月が明るく空を照らして薄い影を地表に投げかけ、夜の街を彷徨う風は、穏やかに桜の枝を揺らした。
 人の居ない公園、虫の声さえ遠く、生き物はすべて息を潜めて夜闇が行過ぎるのをじっと待つ時間帯。動くものは散る花びらと自分たち以外になく、昼の暖かさを忘れた大地は冷たく、雲雀が補充してくれなければ体温は奪われる一方だっただろう。
 吐く息が白く濁る幻を見て、綱吉は瞬きの末、闇と同化する黒髪を揺らした雲雀に目を閉じた。
 顎を少しだけ上に突き出して構えると、何を欲しがっているのか瞬時に悟った雲雀が浅く笑うのが分かった。左の瞼をそろりと持ち上げて様子を窺えば、彼は丁度肘の角度を狭めて身を寄せて来るところで、そのくせ閉じない目が綱吉をじっと見つめていた。
 視線が合いそうになったのを急いで逃げ、瞼に力を込めて降って来た吐息を受け止める。背筋が粟立って緊張から唇を噛み締めていると、それを嫌がった雲雀は音を立てて触れるだけに留め、直ぐに離れてしまった。
 ちゅ、と可愛らしい音ひとつで終わられてしまい、顎を引いて戻した綱吉は不服だといわんばかりの視線を彼に投げる。
「えー」
 ついでに声にも出して心情を吐露した彼の頬を撫で、付着していた土を払い落とした雲雀は、やれやれと肩を竦めてから再び身を沈めた。
 今度こそ綱吉が欲しがっていたキスが落ちて来て、ゆっくりと柔らかく唇を覆う熱に、彼は夢見心地で表情を綻ばせた。
「ん……ふふ」
 幾度か角度を変え、小鳥が戯れるキスから次第に深くなっていく合間、息継ぎの途中で不意に綱吉が声を立てて笑った。
 下唇を甘く噛んで離れた雲雀が、憂いを帯びた瞳を細め、真下で頬を赤く染めている綱吉を見詰め首を捻る。
「なに」
「ん、だって」
 両腕を真っ直ぐ上に伸ばし、雲雀の肩に載せて背中へ流す。指は結ばずにただ預けるのみ、引き寄せられた雲雀は濡れた唇ではなく左の頬にキスを落とした。
 耳元で響いた肌に吸い付く音に、綱吉がまた肩を揺らして笑う。
「だって?」
 なかなか続きを言おうとしない彼を急かし、今度は鼻の頭に触れて軽く牙を立てた雲雀は、むずがって首を左右に振った綱吉から即座に身を引き、痺れてきた右手首を持ち上げて回した。
 交代で左側も同じ仕草をして疲れを解していると、滑り落ちた綱吉の手が彼の肩を握って上へ押した。
「だって、俺たち、花見しに来たのに」
 綱吉は雲雀を、雲雀は綱吉ばかり見て、本来の目的を全く達成していないではないか。
 今度はすんなりと綱吉の抵抗を受け入れ、上半身を起こした雲雀がストンと腰を落として地面に座った。
 こげ茶色の地面に黒いスラックスが滲んで、そのまま溶けて行きそうな雰囲気がある。彼の背後に聳える桜もまた、夜闇に滲む僅かな光の中で、朧で儚げな色合いを呈していた。
 現実世界ではない別のどこかに迷い込んだ気がして、綱吉は雲雀の下から這い出ると自分もまた直接、冷たい大地に座り込んだ。どうせ払い落とすのも無駄と分かっているので、背中やあちこちに付着した土埃は、そのままにしておいた。
「桜、好きなんでしょう?」
「嫌いではないよ」
 雲雀の言い回しは時に分かりづらいけれど、ひとつだけ確実にいえることは、彼が「嫌いじゃない」と言ったものは、具体的には「好き」な分類に入る、という事。
 彼が堂々と照れもなく好きだと言い切るのは、リボーンくらいだ。
 だからそこだけは、少し、羨ましい。
「じゃ、俺は?」
 手元に散った桜の花びらを弾き、頭上を仰ぐ雲雀に問いかける。
 首を巡らせた彼は僅かに怪訝な表情を浮かべ、聞いておいて恥かしがっている綱吉をまじまじと見詰めた。
「言われたいの?」
「たまには」
 嫌いじゃない、なんて誤魔化しではない気持ちを聞いてみたいではないか。
 耳朶まで赤く染め抜いた綱吉の俯いた額を撫で、紛れ込んだ砂粒を指で削ぎ落とし、雲雀が、ふむ、と頷く。
「そうだね……」
 淡く花開いた桜の囁きに耳を傾け、彼は静かに目を閉じた。
 綱吉の髪を撫で下ろした手で片頬を包み、促して抱き寄せる。
 桜散る月夜の影で、紡がれた言祝は――

「完全に治ったわけじゃ、ない?」
「ああ」
「でも特効薬だって」
「一時凌ぎのな。完治出来るモンなら、俺がとっくにそうなってるだろ」
「それもそう、か……って、じゃあずっと?」
「そうなるな」
「そんなあー」
 花見に行きたいと誘った綱吉に、雲雀は色よい返事をしなかった。それどころか休み期間に入り、新学期への準備が本格的に始まろうとしている最中、急激に元気を失っていく彼を心配して、よもや、と思い訪ねてみた保健室で。
 綱吉がシャマルにぶつけた問いかけに、大量の難病を抱え込んだ男はさらりと、当たり前の事のように肩を竦めてくれた。
「治ってないなんて」
「一年のうちのたった二週間程度じゃねーか。そんなガタガタ騒ぐなって」
「大問題なんだよ!」
 折角のこの時期、満開の桜をふたりで見に行きたくて色々と場所を調べ、予定を立てていたのだ。あとは本人から了解の返事を貰うだけで、ひとり浮かれ気分でいたというのに。
 綱吉からの頼みならば渋い顔はしても、大抵断らないで受け入れてくれる雲雀は、予想に反して、嫌だ、のひと言で済ませてしまった。
 旅雑誌や情報誌、更には休日の学校に来てインターネットを使って、人の少ない穴場を色々と調べたのに、つれない返事しか貰えなくて、綱吉はそれなりにショックだった。だが考えてみたら雲雀は、昨年の花見の席でシャマルから手酷い仕打ちを受けている。それが原因で彼に危険が及んだこともあって、深く考えないで病原体を撒き散らした彼に、綱吉は抗議を込めて思い切り睨みつけた。
 座ったパイプ椅子を力いっぱい握り締め、奥歯を噛み締めてめいっぱい怒りを表明する。それでもシャマルは飄々とした様子で掌を返し、跳ね返っている綱吉の頭を押し潰してぐしゃぐしゃにかき回すだけ。
「特効薬」
「ない」
「だってあの時!」
 骸との騒動の最中、獄寺に持たせたものがあったではないか。今すぐそれを寄越せと手を出したのに、きっぱり言い切られてこちらもつれない。理由を問えば、あれは効果が一度しか望めず、同じものを使用してたとしても、既に抗体が体内で形成されていて効果が望めないのだと言われた。
 シャマルの説明の、半分程度しか意味は理解出来なかった綱吉だが、兎も角その薬を使っても完全に無効化出来る保証は無いのだけは分かった。それはつまり、雲雀は永遠に、あの非常に馬鹿らしくもあり、忌まわしくある病気とつきあっていなかければならないという事に他ならない。
「……なんかないのおー」
 じたばたと足を交互にばたつかせて床を何度も蹴り、それでも諦めきれない綱吉が泣きそうな声で悲鳴をあげる。右耳を片手で押さえて五月蝿いと顔を顰めたシャマルは、仕事にならないと万年筆を机に放り投げ、椅子を回して綱吉に向き直った。
「そうは言ったってなあ」
 心底困ったように脂性の髪を掻き回し、彼は渋い顔をして口を窄めた。
 元々軽い気持ちでやった事なので、ここまで大事に発展するとは予想していなかった。今思えば軽率だったと言わざるを得ないが、時間が巻き戻せない以上、打開策は見出せない。
 真面目に研究を続ければ、いずれ治療薬が開発できる見込みは無きにしも非ず。だが、それとて一朝一夕で準備できるような簡単な仕事ではない。
「ずるい、なんとかしてよ」
「ずるいって、お前なあ」
 完全に幼稚園児の駄々になっている綱吉の叫びに、シャマルは弱りきった顔で肩を竦めた。
 ボンゴレの仲間内での花見は、先日既に終了した。当然雲雀にも綱吉は声をかけたが、元々群れ成すのを嫌う雲雀は当然欠席。この時は、理由はこのひとつだけで解釈され、来ないのは仕方が無いと綱吉も割り切って考えて気にしなかったのだ。
 だから今一度、今度はふたりきりで、誰にも邪魔されない場所でのんびりと過ごそうと思っていたのに、この始末。
 サクラクラ病はてっきり治ったものとばかり思っていただけに、余計に衝撃だった。
 雲雀自身も忘れていたに違いない。それが、桜の蕾が膨らみ、ほころび始めた頃から急に、学校や公園に近付くだけで力が抜けて立っていられなくなるのだから、苦痛以外のなにものでもない。
「この時期だけ大人しくしてりゃいいだけじゃねーか」
「シャマルは、日本にどれだけ桜が咲いてるか知らないから、そんな事言えるんだ」
 日本人の心の拠り所、原風景。そのひとつに数えられる春の桜が全く咲かない都市など、果たしてあるのだろうか。
 今や各地は淡いピンク色に包まれ、風が吹けば花びらが散り、美しさと儚さを兼ね備えた樹下では人々が集い宴を楽しむ。自然風紀は乱れるのに、取り締まる側の雲雀が桜の前で本来の力を発揮できないとは。
「テメーがどうにかしろよ」
「出来るならとっくにやってるよ」
 だからこうして、恥を忍んで相談にきているのだ。こんなこと、リボーンにだって言えやしない。
 一応綱吉自身は隠そうとしているのだが、彼と雲雀とがどういう関係にあるのかなど、最早身内で知らない者は無いに等しい状態だった。知らぬは本人ばかりなり、とでも言うのか、周囲が気付いていながら敢えて黙っている事を、雲雀は恐らく分かっているが、綱吉はまだまだ、あれで巧く隠しとおせていると信じているらしい。
 顔を赤くして俯いた彼の頭を、今度はあやすようによしよしと撫で回してやる。いじらしくも愛しい人の為に役に立ちたいと懸命に考えている子供に、出来るなら救いの手を差し伸べてやりたいところではあるが、なかなか現実は難しかった。
「まったくよ」
 しょんぼりと項垂れ、段々と小さくなって行く綱吉を見ていると、胸が締め付けられて可哀想になってくる。本気で落ち込んでいる彼に絆されてしまいたくなるのは、自分の心の弱さ故ではないと思いたい。
「しょうがねーなー」
「シャマル!」
 半ば諦めに近い心境で溜息と共に言葉を吐いた彼に、聞いた瞬間パッと顔を輝かせた綱吉は、彼の手を頭から跳ね除けて大粒の瞳をキラキラと期待に輝かせた。
 現金なものだと心の中で綱吉を笑い、上向いた小ぶりの鼻を指で弾く。
「やってはみるが、今日明日で、なんてのは無理だぞ。少なく見積もっても、そうだな……三年は我慢しろ」
「えええー」
 頭の中で必要な日数を軽く計算し、凡その目安としてシャマルが提示した数字に、綱吉は当然ながら不満の声をあげた。
 気持ちはわからないでもないが、無茶を押し通されるわけにもいかない。寝食を惜しんでやれ、と求められても、それでは雲雀が治る前にシャマルが過労死してしまう。
 良い子だから大人の言うことを聞きなさい、と柔らかい口調で再度説得するが、綱吉は唇を尖らせたまま不服そうだ。
「我侭ばっかり言ってると、特効薬、作ってやらねーぞ」
 これは特別、出血大サービスなんだから、と念を押して彼の批判を押し潰し、シャマルは煙草を吸おうと灰皿に手を伸ばした。
「ずるい」
「ンな事言ってる前に、テメーは他にすることあンだろ。宿題終わったのか」
「それとこれとは別」
「サクラクラ病たって、見さえしなきゃどうって事ねーんだしよ」
 桜は殆ど匂わない。問題になるのは視覚で、目に映し出されたものが桜だと判断した脳が拒絶反応を起こし、神経を麻痺させるのだ。だから目を閉じたまま、そこに桜があると知らぬままであれば、問題なく樹下を通り抜けられる。
 それに、雲雀が嫌がっているのは、桜を見ることではなくて、桜の為に動けなくなる自分を、他人に見られる事だ。
「……そっか」
 誰が相手であっても傲岸不遜な態度を崩さず、常に強気の姿勢を貫き通す。誰にも負けない自負があるからこそ、唯一の弱点である桜に狂わされる自分を他者の目に晒すのをよしとしない。
 たとえ其処にいるのが綱吉だったとしても。
 目から鱗が落ちた顔で呟いた綱吉に、話は終わったと判断したシャマルは、仕事の邪魔だから出て行いくよう命じ、手を振った。追い払われる仕草を受けて椅子から腰を浮かせた綱吉は、まだ若干間の抜けた表情のまま小さく頷き、捕まえていたパイプ椅子の座面から手を離して視線を伏した。
「見えなければ、いい……」
 ぼそりと独白し、数秒置いて顔を上げた彼は、妙案を思いついた顔をして瞳に光を宿し、嬉しげに相好を崩した。
「ありがと、シャマル」
「どーいたしまして」
「特効薬、来年に間に合わなかったら凍らせるからね」
「……テメ!」
 なにげに酷い事を、保健室から出て行く直前にさらりと言ってのけ、本気か冗談か区別のつかない笑い声を残して走り去っていく。取り残されたシャマルは、持ち上げた右手のやり場を失い、床に落ちた煙草を拾って灰皿で捻り潰した。
「しかし、マジで……凍らされそうだぞ、俺」
 安請け合いなどするものではない。じわりと浮かんだ冷や汗に、シャマルは新しい煙草を取り出して自嘲気味に笑った。
「ま、本人らが幸せならそれでいーんじゃねーのかね」
 無精髭を撫でて窓から覗く春の気配に瞳を眇め、彼はどうしたものか、と頭の中で素早く計算式をくみ上げていく。
 きっと今頃、雲雀のいる応接室に駆け込んで、今夜の予定を聞き出しているに違いない。
 燻る煙の中で、嬉しげに笑う綱吉の姿が見えた気がして、シャマルは苦笑し、椅子を軋ませた。

2008/04/06 脱稿