蹴球

 サッカー、観に来ませんか。
 なけなしの勇気を振り絞った獄寺は、心臓が今にも口から飛び出しそうなくらいにバクバク言っているのを堪え、喉の渇きと声の掠れがやたらと気にし、たった一言告げるだけなのに妙に声が上ずって裏返させていた。額には嫌な汗が粒となって浮かんでいる。
 突然の申し出に振り返った綱吉は、何のことだろうと一瞬いぶかしんだ様子で眉根を寄せた。口をへの字に曲げて少しの間考え込み、それから「ああ」と呟いて頷く。
「ワールドカップ?」
 日本代表は早々に姿を消してしまった為、スポーツニュースでも取り上げられているもののその気配は確実に開催前よりも薄れ、勢いは萎んでしまっている。言われてみればまだやっていたんだな、という程度でしか認識していなかった綱吉は、獄寺の顔をまじまじと見上げながらそれでも、「なんで?」と聞き返さずにいられない。
 その返答は想定していなかったらしく、獄寺は息を呑んで全身を硬直させる。せいぜい、「行く」か「行かない」程度の返事が成されるだけだろうと思っていて、彼は一瞬頭の中を真っ白になり目をぱちくりさせた。
「獄寺君?」
 見るからに立ち尽くしている、というのが分かる獄寺の変貌に綱吉は顔を顰めて名前を呼んだ。それで我に返った獄寺だけれど、綱吉の「何故」になかなか答えられない。
 だって、一緒に観たいだなんて、恥かしくて口が裂けても言えない。
 胸の前で指を交差させ、視線を宙に浮かせてどう言い訳すれば良いのか迷う。こういう時イタリア語であれば気の利いた台詞が出てくるのに、日本語だとどういうのだったっけ……単語がすっぽり頭から抜け落ちてしまって口がもごもごする。
「? ああ、そっか」
 そんな不審者並みの行動をとっている獄寺を前に、綱吉はふと、数日前の新聞記事を思い出した。夕食前の食卓に、無造作に置かれていた新聞に、イタリアという文字を見た気がする。同時にそれが何の記事であったかも思い出して、綱吉は勝手に自分で納得してしまった。
 そういえばワールドカップの決勝は、イタリアとフランスがやるんだったっけ、と。
 獄寺はイタリア出身である。綱吉の家に居候している面々にもイタリア出身がいるが、女子供ばかりであまりサッカーには興味がないらしい。だから話題に上る機会も少なく、綱吉もさして気にしたことはなかった。
 獄寺が言い出すまで、ワールドカップがまだ開催中だというのも忘れていたくらいだ。学校での話題でも、日本代表が負けると途端に話は尻すぼみになり、サッカー部だったり特別サッカー好きの生徒だったりする以外は口にしなくなって久しい。
 綱吉と仲がよい山本は野球一筋だから、サッカーなんて球蹴りは面白くないと主張してこの話題を出すと拗ねるので敢えて避けていたともいえる。獄寺自身もこの開催期間中、特に気にした様子を見せていなかったのでサッカーには興味が無いものと綱吉は勝手に思いこんでいた。
「いえ、あの……俺も、そんなに、その、詳しくはないんですけど」
 獄寺の指の動きが細かく激しくなっている。いよいよ焦りだした彼の首筋に汗が光った。視線は相変わらず綱吉に向かないまま、薄汚れた天井を見上げている。
「なんて言いますか、えっと、あれ。なんて言うのか」
 Patriottismo.
 イタリア語ならば出てくるのに。非常に歯痒い思いをしながら獄寺は舌打ちした。腹の前で結んだ指を今度は見下ろし、じっと小さな隙間から僅かに覗く廊下を睨む。
 そんな獄寺を綱吉は僅かに目を細めてみていた。もうじき休憩時間も終わってしまうし、自席に戻らなければならないのに、獄寺が動かないようでは自分も席に戻れない。どうしようかと困ってしまって、獄寺が言わんとしている事を考える。無論イタリア語で説明されても、その言語に精通していない綱吉はさっぱり分からないのだけれど。
 まあ、獄寺君はイタリア出身だし。あんまりサッカーが興味なくても、世界一を決める大会の決勝まで勝ち残るのはとても素晴らしいことだから、応援したくなる気持ちは分からないでもない。綱吉だって前回の大会で日本が決勝リーグまで残った時は、テレビの前でガラにもなく興奮し、ルールもよく知らないまま選手を応援していた。
 獄寺もきっと、この時の綱吉と同じ気分なのだろう。
 イタリア。マフィア発祥の地であり、獄寺の出身地。どうも周囲のお陰で血なまぐさいイメージが先行してしまっているが、セリエAというプロリーグもあってサッカーは強い。そんなチームの試合を見るのも、詳しくは無いが、面白いかもしれない。
 けれど開催国のドイツは地球のほぼ反対側で、試合時間は日本の真夜中、明け方近くではなかったか。しかも平日の朝だった気がする。現実的な中学生の日常が壁となって立ちはだかっているのを感じ、綱吉は顎に手をやって考えた。獄寺はまだ言葉を捜している。
 前日は日曜で、どこかへ遊びに行く予定もない。昼のうちに仮眠を取っておけば、早朝の試合時間でも起きていられるだろうか。獄寺の誘いが「来ませんか」だったので、恐らく沢田家ではなく獄寺の家に来ないかという意味、ならば月曜の授業の準備と制服も持ち込めば、試合が終わってそのまま学校に行けばいい。
 なんとかなる、かもしれない。
 そこまで考えいたって漸く、綱吉は「いいよ」と答えた。瞬間、目を瞬かせた獄寺は目の前の綱吉が何を言ったのか聞き取れなかったようで、もう一度、と小さく言った。
「だから、いいよ。サッカー、観るんでしょ?」
 それとも違うの? 瞳で問いかける綱吉に、獄寺は大慌てでぶんぶんと、綱吉の目には扇風機の羽が回っているように見える動きで首を横に振った。振りすぎて頭がくらくらしたのか、僅かに獄寺は横によろけた。
「本当ですか? 本当にいいんですか?」
 算段としては断られる可能性八割と踏んでいただけに、俄かには信じがたくて獄寺はしつこく再度確認する。同じ事を何度も言わされるのがいやで、綱吉は眉間に皺を寄せつつ、「嫌なの?」と聞き返す。目に見えて機嫌が悪くなっていく彼に、獄寺はまた、首がそのまますっぽ抜けていくのではと心配になるくらい首を振った。
 やっとのこと落ち着いたのかと思うと、今度は、まだ対戦してもいないのにイタリアがフランスに勝って優勝を決めたかのように嬉しそうに破顔して、呆気に取られる綱吉の両手を掴むと上下にぶんぶん振り回す。最後は綱吉も呼吸が出来なくて苦しいくらいに抱き締めた。
 カーン、と。
 チャイムがスピーカーから鳴り響き、見守っていたクラスメイトが顔を上げてそちらに意識を向けた瞬間。
 ゴーン、と。
 どこからか飛んで来た軟球が綱吉を抱きしめる獄寺の頭を直撃した。

 当日、夜。
 獄寺の家に招かれた綱吉は、玄関を開けて姿を覗かせた獄寺の格好に唖然とした。
 青色のレプリカユニフォームに、国旗とロゴが印刷されたタオルを首にかけている。にこやかな笑顔は気持ち悪いくらいで、一瞬このまま帰ろうかと思った綱吉はいたって普通のTシャツ姿。
 なんとか引きつり気味だったものの笑顔を返すと、入った、入ったと背中を押されて後ろでドアが閉まる。着替えと明日の準備一式を詰めた鞄を胸に抱き、不安を感じながら招かれたリビングは想像した以上にイタリアンサッカー一色。どうやって集めたのか、そもそもそこまれ彼はサッカーファンだっただろうか。
 それとも、ただ単にお国柄というやつなのだろうか。
 ワールドカップが終わった後、この多彩な飾りつけと応援グッズは何処へ行くのだろう。胸を過ぎった無駄遣い、という単語は獄寺に通用しそうに無い。彼は鼻歌交じりの上機嫌さで、三十六インチはあるだろう液晶テレビ前に置いたソファへ綱吉を手招く。促されて近づくと、ソファの向こう側にはテーブルがあって、そこには既に今夜の夕食と思われる料理が並んでいた。
 誰が作ったのか、注文したのか、こちらも見事にイタリアン一色。国旗を模ったピザがほんの少し毒々しい。見た目も匂いも良いし、相手が獄寺であるから、ビアンキ作の料理ではなさそうだとひとまずホッとした。
 その後は食事をしつつ、風呂も借りて、終わっていない宿題を手伝ってもらい、あとは予備知識と言うことで獄寺からみっちりイタリアの代表選手をビデオ解説つきで教え込まされた。表には出さなかっただけか、彼はそれなりにルールにも詳しく、今大会の既に終わっている試合をビデオで見返している時も嬉しがったり、悔しがったりと忙しい。
 最初こそ珍しいものを見る目で獄寺をやや遠巻きに眺めていた綱吉だったけれど、教えられているうちにサッカーも段々と面白く感じられてきて、最終的に準決勝の試合のダイジェストを見終わる頃には獄寺とふたり、近所迷惑も考えずに拳を握って大歓声を送っていた。獄寺自身は何度も見たであろうシーンなのに、最後試合終了のホイッスルが鳴り響く映像が流れた瞬間は、隣に座る綱吉と抱き合ってソファの上で大はしゃぎだった。
 無論、十数秒後に先に綱吉が我に返って、お互い気恥ずかしさに顔を染めて俯きあってしまったのだけれど。
 時計の針を見るともう既に深夜二時を回っている。外はカーテンの所為で見えづらいが恐らく真っ暗だろう。試合開始までまだ少しある。こんな時間の食事は身体に悪そうだったが、散々はしゃいだからか小腹が空いた綱吉は、獄寺の了解を得て冷めていたピザの残りを電子レンジに突っ込む。その間獄寺はソファで胡坐をかき、リモコンを弄ってチャンネルを替えていた。
 通販番組や、英語のニュースが次々と画面上に現れては消え、野球をやっているかと思うと今度はカーレースだ。日本語でも英語でもない言語も聞こえて来たから衛星番組なのだろう。艶っぽい女性の太もものアップには流石に度肝を抜かれた。獄寺が「うわっ」と叫んだものだから振り向いた瞬間に見えてしまって、慌てて視線をそらしたけれど無意味に綱吉の心臓は跳ね上がってどきどきしていた。
 電子レンジの音が響き渡り、やけどをしないよう注意しながらピザを取り出す。多少味は落ちるだろうが食べられれば良いという気分で、冷蔵庫からは勝手にジュースも拝借してリビングに戻る。チャンネルはひとつに固定され、聞きなれないことばをキャスターが喋っている。映し出される映像はさっきまで見ていたサッカーの試合のダイジェスト版を背後に流し、テーブルを囲んで座る外国人。
「あ、日本語同時通訳もありますんで」
 怪訝にしながらテーブルに料理を置いた綱吉に気付き、獄寺がリモコンをなにやら操作する。ぴっ、という短い音の後に突然聞きなれた日本語が耳に飛び込んできて、綱吉は目を丸くした。テレビに映っている人物は男性だが、聞こえてきた日本語は女性のもの。同時通訳、ああイタリアの番組なのか。そう思い至るまでにたっぷり五秒は必要だった。
 獄寺が手を伸ばし、綱吉が運んで来たピザを掴む。溶けたチーズが糸を引き、彼は片手で器用にピザを繰って絡め取る。その些細な動作さえ、彼が日本育ちではないのだと気付かされた。
「美味しい?」
 問いかけつつ、綱吉も皿に手を出してピザを抓んだ。座りながら口に咥え、空になっているコップにジュースを注ぐ。同じく空っぽになっていた獄寺のコップにも半分ほど注いでやり、ソファへ深くもたれかかった。
 男性が喋っているのに、女性の声が聞こえるのは妙な感じだ。粘っこい生地を噛み砕きつつ、綱吉はぼんやりと考える。冷えたポテトにも手をつけ、数分の食事で満腹になってしまった。小さく、欠伸が漏れる。
「眠いです?」
「んー……大丈夫」
 昼寝はしてきてある、子供たちと一緒に。だから睡眠時間は足りているのだが、なにせ今現在時刻は真夜中。普段ならベッドの中で布団に包まり夢の世界にいる時間である、さっきまでは興奮していたから感じなかったが、胃に物を入れた途端睡魔がひたひたと綱吉に忍び寄る。
 試合開始までまだ時間があるが、テレビに映し出された試合会場は観客でごった返している様を伝えていた。
「試合が始まったら起こしますので、少し眠ってもいいですよ」
 獄寺が指についた油を舐め取りつつ言う。彼はちっとも眠くなさそうで、それが綱吉には負けた気になって悔しい。だからか、意地を張って大丈夫と首を振る。獄寺が余計に心配そうに顔を歪めるので、なお強く「平気」と繰り返した。
「ちゃんと起きてるから」
 だって一緒に観ようって約束したのだ。
 獄寺が選んだ番組は、試合前の選手の様子を映し出しては、応援する人々へのインタビューも挟まれる。イタリア各地の様子も伝えられ、どこも熱気に包まれているのだと鳥肌が立った。少しずつ眠気も去っていくのが分かる。綱吉は未だ同時通訳の抑揚ない女性の声に慣れなかったが、なるべく画面を注視して映し出される人の唇に聞こえる音を合わせようと努力する。
 いつかイタリア語がぺらぺらになれば、こんな苦労はせずに済むだろうか。
 残っていたピザは全部獄寺が平らげた。コップは再び空っぽになり、綱吉が幾度目かの欠伸をかみ殺した後、漸く試合開始のホイッスルがスピーカーから響き渡った。
 ピッチ上を縦横無尽に駆け巡る、合計二十人の選手たち。檄を飛ばすキーパーに、立ち上がって怒号をあげる監督たち。立ち上がって応援する人々の歓声は地鳴りのように強く心を揺さぶる。こんな世界があるのだと、目を大きく見開いて感動さえ覚える。
 ただ、同時に睡魔もまた、綱吉に新たな世界を見せてあげると耳元で甘い囁きを続けている。
 獄寺はソファで半分腰を浮かせ、握りこぶしを震わせながらテレビにかじりついていた。一度そちらに意識を集中させてしまうと、呼吸するのも忘れて没頭して綱吉のことなど頭から離れてしまっていた。
 コツン、と何かが肩から肘にかけてぶつかってくる。すぐに離れて行ったがまた、柔らかい毛並みが半袖ユニフォーム姿の獄寺の腕を撫でた。
 流石に気付いて視線を横向ける。綱吉の頭が視界いっぱいに映し出された。
「十代目?」
「んー……」
 声を潜めて呼びかけても返って来るのは生返事。背を丸めて顔を覗き込むと、若干焦点の定まらない瞳が宙を泳いでいた。正直、獄寺の顔も見えているのか分からない。
「十代目、眠いのならベッドに」
「んー……? へぃきー」
 再度呼びかけて漸く獄寺を見返した綱吉は、若干呂律の回っていない口調でそう言い張った。本人に平気といわれたらもう逆らえないのが獄寺であって、「そうですか。本気で眠くなったら言ってくださいね」とだけ返して再び画面に目線を戻す。
 同時通訳は終わり、今はイタリア語の中継だけになっている。ピッチを駆け回るボールを追いかけ、テレビの動きもかなり荒っぽい。エキサイトする観客に実況中継、悲鳴と歓声が入り混じって騒々しいことこの上ない。獄寺は一瞬でドイツの地に心を飛ばし、いけ、そこだ、と叫んでは自国イタリアの選手がボールを奪うと握りこぶしを天に向かって突き上げる。
 ガッツポーズを決めた肩に、また僅かな重みが加わった。ハッと我に返り視線を動かすと、綱吉の茶色い毛並みが凭れかかっている。最早うとうと、のレベルではない。
「十代目……?」
 すっかり存在を忘れていた事に内心焦りながら呼びかけるが、今度は返事が無い。すうすうという寝息は静かで、テレビから聞こえてくる音にあっと言う間にかき消されてしまう。閉じられている唇は僅かに前方に突き出ていて、見下ろす先の睫は思いの外長い。
 試合のことなど忘れて獄寺は顔を赤くしたまま、寝入っている綱吉に見入ってしまう。
「十代目……」
 頭の中がボーっとしていく。思わずごくりと喉が鳴った。何を考えている、何を想像している。何を期待している、何をしようとしている。
 獄寺の頭の中に、先ほどチャンネルを弄っている最中に見かけた番組が蘇る。婀娜な女の艶めかしいポーズに、意味ありげな薄暗い部屋。歓喜に震える真っ赤な唇と身体のラインが出すぎる程にセクシーな衣服。慌ててリモコンを押したからその後どうなったかは分からないが、明らかにそれと分かる番組に頭の中が湯立ち気味だ。
 綱吉の無警戒な寝顔に視線が吸い付き、離せない。
「じゅ、十代目……」
 また喉が鳴った。唾を大きな動作で飲み込んで、獄寺は激しく律動する心臓を懸命に宥める。テレビの歓声さえ霞む心音に鼓膜が破れそうだ。
 左腕が上がる。眠っている綱吉を刺激しないように注意しながら慎重に肩の高さまで持ち上げて、肘を真っ直ぐ伸ばし、指は何かを掴もうか掴むまいか逡巡して開いたり、閉じたり。視線が泳ぎ全身から汗が噴出している。汗臭さで綱吉が起きないかはらはらする。
 ぎゅっ、と目を閉じると同時に指を折り畳んで強く握る。意を決し、獄寺は凭れかかっている綱吉の肩を抱くべく肘をゆっくりと曲げていった。しかし。
 目の前のテレビ、その左右に置かれたステレオスピーカーから、今までと比にならない歓声がいきなり響き渡った。心臓が飛び出るくらいに驚いてソファからずり落ち、眼を丸くした獄寺は両手を空につきたてて仲間と抱き合う選手の姿を見た。
 アナウンサーがなにやらまくし立てている。興奮しすぎているのか何を言っているのか獄寺でさえ判別不能だ。だが状況が大きく変わったらしい、綱吉に気を取られている間に。
 しまった、と獄寺は座り直しながら心の中で舌打ちする。獄寺がソファから落ちたので綱吉は背凭れに頭を預け、それでもまだ眠っている。音が五月蝿いのか、時々不機嫌そうに顔を顰めていた。
 そうっと彼の顔を覗き込む。無邪気な寝顔は心癒されるが、背後のテレビが伝える試合の状況もすごく気になってしまって、獄寺は前を向いたり振り返ったりと非常に忙しい。長い間画面から眼を離していたので、戦況がどうなっているのかもさっぱりだ。
「ああ、え、あ……あー!」
 どっちも観ていたくて、けれどどちらも同時には見られなくて。パニックを起こして獄寺は頭を抱える。気付かない綱吉と、我関せずのテレビ中継の間で獄寺はこれまでにない選択を迫られている。
 夜明けまで、まだもう少し。
 獄寺の眠れない夜は暫く終わりそうにない。