君の笑顔は僕を殺す

 いろいろあったけれど、今日もなんとか無事に終わった。
 騒々しい毎日にもようやく慣れて、戦うことにも違和感を持たなくなった。
 けれどそれは多分、良くないことなのだろう。戦うことが日常に組み込まれている――それはまず間違いなく、異常なことなのだから。
 でも……向こうが仕掛けてくるのだから、降りかかる火の粉は払わなければこちらが一方的に火傷するだけだ。
「難しいなぁ」
 頭を掻きむしり、トウヤは呟いた。
「なに? 何が難しいって?」
 広間のテーブルに肩肘をついてため息をついていた彼に、後方からリプレが声をかけてきた。振り返り見ると、パジャマに着替えた彼女からはほかほかと湯気が立ちこめている。その後ろでは、フィズがラミの濡れた髪の毛をタオルで拭いているところだった。
「あ……お風呂?」
「うん。あと入ってないの、トウヤとソルだけだからね」
 肩に湿ったタオルを掛けて、彼女は笑う。
「ちょっとぬるくなってたから、少し焚いた方がいいかもしれないよ。でもあんまり熱くしても、ふたりしか入らないからもったいないかな」
 薪の数にも限りがあるし、そこまで湯は冷めてないから暖める程度でいいはずだと、彼女は椅子から立ち上がりかけたトウヤに言った。
 リプレはトレードマークの三つ編みをほどき、背中に垂らしている。案外髪は長くて、腰よりも下まであった。こうしてみると昼間とはがらりと雰囲気が変わって、新鮮な感じがする。
「な、なに……? じろじろ見て」
「いや、三つ編みの時と、印象が違うから……」
 椅子の背もたれに手を置いたまま、上半身だけを振り向かせているトウヤの視線が気になって問いかけた彼女に、彼は臆面もなくそう答える。
 風呂上がりでいくらか上気していた彼女の頬が、また少し赤くなった。
「そう? 変かなぁ」
「変じゃないよ。うん、可愛いよ」
 にっこりと目を細めて言ったトウヤだったが、
「なーに女を口説いてんだよ、お前は」
 ぼこっ、と予告無しに後頭部を殴打されて前のめりに倒れそうになった。
 浮き上がった椅子の後ろ足が空しく中を掻く。背もたれに顔をぶつけたトウヤは顎を抑えて呻いた。殴られた頭も痛い。しかも平手ではなく、握り拳だった上、容赦なく力を込められた。
「痛い……」
 両手で顎を包み込むようにしていたので、必然的に声がくぐもる。しかしトウヤをぐーで殴った張本人にはしっかりとその一言は聞こえていた。
「ほー? まだ殴られたいのか、そうかそうか、よし、ご期待に応えてやろう」
 何故そうなる、とトウヤは心の中で悲鳴を上げた。が、実際にそんなことをしたら恥ずかしいだけなので(これでも体裁を気にする方なのだ)、声には出さない。
「ちょ、ちょっとソル! どうしてトウヤを殴るの!?」
 あまりに一方的に見えるソルの横暴に、はっと我に返ったリプレが慌てて止めに入る。
「別に理由なんてねぇよ。ちょっと気にくわなかっただけだ」
 むくれたような声が返され、そんなことは理由にならないとリプレはなおソルにくってかかろうとした。仲間になってまだ日は浅いが、ひとつ屋根の下で共同生活を送る家族同様の人を、そんな単純な動機で殴ってもいいわけがない。それが彼女の言い分。
「リプレ、いいよ。そんなに痛くなかったから……」
 上手に嘘をつくことにも慣れている。人をだますのはとても簡単だ。それが裏に特別な画策でもない限りは、嘘も時に優しさになる。
「本当に? 大丈夫なの、トウヤ」
「平気だって。な、ソル?」
 本気で殴った訳じゃないもんな、と微笑みながらトウヤはソルに言う。だが彼はぷい、とそっぽを向いてしまった。
「…………」
 対処に困って、トウヤの微笑みは苦笑に変わる。
 さっきのソルは、多分本気で殴っていたに違いない。まだじんじんとその箇所が鈍い痛みを発しているのだから。ただ、トウヤとソルとでは鍛え方が根本的な部分から違っているため、ソルの本気はトウヤの手加減と同じレベルであったりする。
 結論から言うと、痛くないと言ったら嘘になるが、かといって頭を抱えて悶絶するほどの痛さではなく、我慢できてしまえる痛さ、だ。
 もしかしたら、ソルはプライドを傷つけられたのかもしれない。トウヤがソルの事を、本気で扱っていないとでも誤解したのだろうか。
「ソル?」
 トウヤに謝りなさい、と子供達やガゼルを叱るときと同じトーンでリプレが言う。だがソルは心なしか頬を膨らませたまま答えようとしない。
「ソル!」
 ついにリプレが堪忍袋の緒を切りかけた。
 やばい、と思ったときにはもうトウヤは椅子から立ち上がって、ふたりの間に割って入りしかっ! とソルの腕を掴んでいた。
「ほら、ソル。早くお風呂に入らないと……。あとは僕達だけなんだからさ」
 凍りついた笑顔を張り付かせて、トウヤはずるずると大して抵抗もせず、そのかわり素直に自分で歩こうとしないソルを引きずってその場を後にした。
 食堂から角を折れて、自分の部屋の前に来たところでトウヤは止まる。それを待っていたのか、ソルは途端にぶんっ、と腕を振り回してトウヤから逃げた。いや、それは正しい表現ではないかもしれない。ソルはトウヤから2,3歩分離れただけでそこに留まったのだから。
「ソル?」
 訝しんで彼の顔をのぞき込もうとすると、ふっと直前で避けられた。
「怒ってるのかい?」
「べつに……そんなんじゃねぇよ」
 ぶっきらぼうに答えるその調子からは、自分は不機嫌です、というオーラがありありと伝わってくる。
 ――素直じゃないんだから、まったく。
 軽く息を吐き、トウヤは肩の力を抜いた。これは、しばらく放っておく方がいいだろう。下手に触って、余計に機嫌を損ねられると困る。
「じゃあ、お風呂に入ってしまおうか。みんなもう上がってしまったみたいだから」
「知ってる」
 だからアジトの中に戻ってきたんだ、と小声で呟いたソルは、相変わらずトウヤと視線を合わそうとしない。
「どこか行ってたのかい?」
 問うと、ソルは「別に」としか答えない。だからトウヤも、
「そう。あまり夜ひとりで出歩くのは感心しないけど」
 南スラムは北スラムほどではないにしろ、やはり浮浪者や犯罪者が隠れ住む場所でもある。その中を一人きりで、しかも明かりも少ない夜に出かけることは危険なことだと、ソルはどこまで理解しているのかトウヤは気になった。
「お前に言われたくないぞ」
 お前こそひとりでたまに出かけているじゃないか、とソルに言い返されてトウヤは苦笑いを浮かべる。確かにその通りだが、やはり自分のことは無頓着になっても他人のことはどうも気にかかってしまうらしい。
「お前は俺の親か」
 過保護にも程があるぞ、と言われてしまい、トウヤは返す言葉が見付からなかった。
「親……はちょっとね、遠慮したいな」
「当たり前だ。俺だって御免だ」
 だから返事に困ってそういうことを言ったら、即答でソルに一刀両断されてしまった。取り付く島もないとはこのことであろうか。
「そうだ。お風呂、入らなくちゃね」
 会話が続かなくて、トウヤは最初の話題に戻ることにした。だが、
「やだね」
 再度即答で拒否され、トウヤは目を丸くする。
「どうして?」
「お前と一緒は、い・や・だ」
 理由を尋ねると、何故かやけに強調した言い方で突き返されてしまった。
「それに、俺は温い湯になんてつかりたくないからな。トウヤは、裏で火の調整してこい!」
 げしっ、と。
 頭にやったらそれほどダメージが行かないことを先程学んだ所為だろう。ソルは思い切り、今度はトウヤの脛を蹴り上げて怒鳴ってきた。
「☆△×∞∠@¥∩∃ρτ!?」
 声にならない悲鳴を上げ、トウヤは片足でぴょんぴょんその場ではね上がる。今蹴られた箇所を抱き込むようにしたせいで、途中バランスを崩して倒れそうになった。それが偶然か不幸か、ソルが立っていた方向だったから……。
 てっきり、ソルは逃げるだろうとトウヤは想像していた。でも、違った。
 差し出された腕は細く、とてもトウヤを支えきれるものではなくてふたり一緒にきりもみ状態で床に倒れ込んだ。ただ、どういうわけか上からおちてきたはずのトウヤが、床の上ではソルの下敷きになっているのは不思議といえば不思議。
「いてて……」
 またしても後頭部をしたたかと床に打ち付けたトウヤが、今度こそ顔をしかめて痛そうな表情を作る。どうやら、先程ソルにやられた箇所の上をまたぶつけてしまったらしい。コブになっているかもしれなくて、トウヤはもぞもぞと身体を動かして頭に指を添える。
「いちっ!」
 皮膚が赤く腫れ上がった部分に少し触れただけで、痛みが脊髄を突き抜けていく。これは完全にたんこぶになってしまっている。血が出ていないのは幸いか。
 それにしても……。
「ソル、いつまでそこにいるつもりかな……?」
 トウヤにまたがるようにしてのし掛かっているソルを見上げ、トウヤは表情を引きつらせた。腹部を圧迫されて、かなり苦しい。
「え? あ、ああ……悪い」
 慌ててソルがトウヤから離れるが、まだどこかぽーとしている。倒れたときにどこかぶつけたのだろうか。しかし、トウヤが下敷きになったおかげでソルには実質的な被害は及んでいなかったはず。
「ソル?」
 痛む腹を堪えて身を起こし、トウヤは傍らでまだ座り込んでいる彼に手を伸ばした。鍛えられている割に細めの指が、ソルの頬を滑り耳元まで伸びる。薄茶色の髪が触れ、途端にぴくっ、とソルの身体が小さく竦んだ。
「?」
 耳を包み込みようにして、さらにうなじに指が向かおうとしているところでようやく、ソルはトウヤの手を払った。
「馬鹿……! 触るな!」
 ぱしん、と打たれた手の甲を押さえたトウヤが首を傾げる。
 ソルは自分だけが怒っていて、しかも肝心の相手にまるで自分の気持ちが伝わっていないことが癪に障る。自分ばかりが浮き足立って、空回りしている気分でいらいらした。
「お前はさっさと、風呂を沸かしてきたらいいんだよ!」
 泣きたい気持ちを誤魔化してソルは怒鳴った。素直になれない自分の性格を恨めしく思いながら。
「……分かった」
「――!?」
 いつになく剣呑で低い声でトウヤが答え、服についた埃を払いながら彼は立ち上がった。見上げるソルの、縋るような目つきにも気がつかないフリをして、彼を無視する。
「じゃあ、少ししたら風呂場に来てくれ」
 一度もソルを見ようとせず、トウヤは冷たい足音を立ててその場から立ち去ってしまう。ソルは呆然と彼の背中を見送るしか出来ず、床に腰を下ろしたままひどく後悔した。
 置いて行かれた気がした。
 そんなつもりはなかったのに。
 嫌われた……だろうか。
「トウヤ!」
 呼んでも、返事はなかった。

 周りには大人しかいない環境で育った所為で、ソルは感情表現が下手だった。
 毎日が召喚術の研究と実験の繰り返しで、思い切り遊んだりはしゃいだりすることもなかった。
 楽しいことも、哀しいことも特別なかったし、嬉しいと思えるようなことは召喚が上手くいったりしたときくらいだった。実験が失敗して苛立って物に当たることが少なからずあったものの、誰かに対して怒りを憶えることもほとんどなかった。
 正直なところ、ソルは自分の感情を持て余している。どう表現すればいいのかを知らないから、素直に表に出すこともはばかられて後込みしてしまう。これは言葉にしてもいいことなのか、それとも押しとどめるべきなのか、そういう考えが先に出てしまって結局言い出せないまま、会話は終わってしまう。
 本当のことを口に出したら相手が怒ることも、フラットに来てから知ったことだし、かといって嘘ばかりつくのも良くないと学んだ。
 だから人間関係は煩わしく面倒くさいと、ソルは最初思った。
 そうとばかりは言えないことに気付いたのは、つい最近のこと。同時に、扱いに苦慮する感情が芽生えたのは言うまでもない。
「俺、変なのかな……」
 思いため息をつき、ソルは離れにある風呂場の扉を開ける。中には誰もおらず、天井に吊されたランタンの明かりが室内を照らし出していた。床に敷かれた簀の子は水に濡れ湿っており、洗濯籠には乱暴に皆の服が詰め込まれている。
「ソル」
 ガラッ、と一度ソルによって閉められた風呂場の入口がいきなり開き、トウヤが顔をのぞかせたので上着に手を掛けていたソルはどきりとした。だが彼は中に入ってくる素振りを見せず、扉と壁に両手を押しつけるような体勢で立ったまま、
「入る前に、よくお湯を掻き回した方がいいよ。上だけが熱くて下は冷たいまま、ってことがあるから。それと、今沸かしている最中だから、もう少ししてから入ってくると寒い思いをしなくて済むよ」
 それじゃ、と用件だけを言い終わるとトウヤは扉を閉めて出ていった。上着のボタンに指を添えたまま、ソルは寂しい気持ちを感じて慌てて首を振った。
 ――馬鹿! 何考えてるんだ俺!
 自分から一緒に入浴するのを拒んで置いて、今更ひとりで入るのは寂しいだなんて、虫が良すぎる。だがやはり、ここの風呂はひとりで入るには広すぎる。もっとも、無色の派閥本部にある風呂も、無駄なくらいに馬鹿広かったのだが。
 だからかもしれない。広い場所に一人きりになると急に不安になるのは。
「トウヤ……」
 一緒にいたいだなんて思う人が出来るなんて、考えてなかった。でもあまりにも側に寄られるとどうしていいのか分からなくて突っぱねてしまう。嫌われたくないのに嫌われるような事ばかり言って、憎まれ口を叩いて相手を傷つけて。本当に不器用なこの性格が恨めしい。
「はぁ」
 ため息をつき、ソルは乱暴に服を脱ぎ捨てた。山盛りの洗濯籠に強引に突っ込むと、タオルを手に浴場に入る。
 むわっとした湯気が立ちこめ、ソルは白に染まった視界に頭を振る。湯の温度を確かめようと手を浴槽に伸ばして、
「あちっ!」
 その熱さに手を引っ込める。
「あ、そうか……。掻き回すのが先か……」
 先程トウヤに言われたことを思い出し、ソルは浴場の片隅の置かれていた長めの棒を取った。それを湯の中に突っ込み、乱暴に掻き回す。水面が荒く波立ち、溢れた湯がソルの膝にかかる。だが温度はさっきよりも比べものにならないくらいに下がっていて、ちょうどいい具合に沸き上がっているようだった。
 湯桶に持ち替え、先に身体に湯を浴びせかける。石鹸を取って泡立て、慣れた手つきで身体の各所を洗ってから、風呂桶に足を入れる。
 温かい湯に肩まで浸かり、顔を濡らす。浴槽の壁に背中を預けて天井を仰ぐと、そのすぐ下側に小さな窓があった。鍵がかかっておらず、湿気が籠もらないようにするためか、わずかに開けられていた。
 その窓に、ぼうっと人影が映る。
「!」
 微かに開かれていた窓の隙間に手をかけて、その不埒者はあろうことか窓を開けようとしているらしかった。
 反射的にソルは湯殿から立ち上がり、洗い場に置かれていた手桶を掴んでいた。
 がらっ。
 すこーん!!
 窓が開かれた瞬間、振りかぶったソルの手から投げ放たれた手桶がその小さな窓枠を越えて不埒者にクリーンヒット。
「うがっ!?」
 だが聞こえてきた情けない悲鳴に、ソルは釣り上げていた目を丸くする。その声はよく聞き覚えのある人のものだったから。
「トウヤ!?」
 てっきりのぞきかと思ってしまったソルだったが、よくよく考えてみればこの窓は窯のある方向に設置されている。ここを通して、風呂の中にいる人と火の調整をしている人が会話出来るようになっているのだと、彼はすっかり、綺麗さっぱり忘れていた。
「ト、トウヤ!? 大丈夫か!?」
 ソルは大慌てで窓に駆け寄り、外を伺う。すぐ下で、手桶を片手にトウヤは顔をおさえてうずくまっていた。
「あ……悪い、トウヤ……」
 謝ってももう遅いのかもしれないが、ソルは何度も謝罪の言葉を口にした。本当に後悔しているようで、聞いていたトウヤもまだ顔がじんじんしているものの、可哀相に感じて平気だと手を振って見せた。
「大丈夫だよ」
「でも……」
 窓を通して手桶をソルに返し、トウヤは微笑む。まだ鼻の頭が赤くなっているくせに、やせ我慢もいいところだ。
「ごめん、俺……」
 勘違いも甚だしい、と俯き加減になるソルに、トウヤはそんなに気にすることはないとしか言えない。自分は打たれ強い方だから、と。
「それに」
 小さな窓であるものの、積み重ねられた薪を足場にしたトウヤには風呂場の中がすべてのぞくことが出来た。
「なかなかいいものを拝めたしね」
 にっこりと。細い目を更に細くして言ったトウヤの言葉の意味がすぐに理解できなかったソルだったが。
「…………」
 トウヤの視線が自分の顔ばかりを見ているのではないことに気付いて、徐々に顔を赤くさせた。同時に沸き上がってきた何とも表現しがたい怒りと羞恥に身を任せ、戻ってきたばかりだった手桶で素早く浴槽の湯をすくい上げると。
「トウヤのばかたれーーーーー!!!!!!」
 怒声と一緒に手桶ごと湯をトウヤの頭上に放り出した。
 かこーん。
「あうっ」
 すぽっ、と。トウヤの頭に手桶がはまった。中のお湯は彼の全身をびしょぬれにするのに充分だった。
 鋭い音を立ててソルが窓を閉める。しっかりと鍵もかけて頭まで湯の中に沈んだ。
 ぶくぶくと気泡が水面に浮き上がって弾け散る。耳まで赤くなって、一気に上昇した心拍数を必死に抑え込もうとするが上手くいかない。
「ソールー」
 外で、トウヤの情けない声が聞こえてきた。
「寒いんだけど……」
「知るか! 一生そこで反省してろ!」
「そんな冷たいことを言わないで……お風呂に入ってもいいかい?」
「絶対に嫌だ!」
 お前なんかもう知らない! 叫んでソルは、残っていたもうひとつの手桶を取るとまた湯をそこにすくい取った。鍵を外して窓を開けると、腕だけを外に出して真下に向かって湯を捨てる。
「うわっ!」
 湯が何かにぶつかって染み入る音が聞こえたが、ソルは敢えて無視しまた先程と同じように窓にしっかりと鍵を掛けた。
「トウヤのばかたれ」
 呟きは湯に溶けてソルにも聞こえなかった。